性的サービスへの罰則強化に欠かせないもの 権利と責任の法制化こそが必要

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国連の推定では、18歳以下の1400万人の少女(そのうち3分の1は15歳以下)が毎年結婚している。毎日3万9000人の少女が嫁入りしていることになる。3カ国では少女の3分の1が15歳の誕生日を迎える前に結婚している。

78カ国で同性愛は禁止

同意した成人による性行為を規制する法令も、同様に厳しい状況にある。78カ国で同性愛は禁じられており、7カ国では死刑に値する。そのような弾圧的で抑圧的な法律によって生じるダメージは、同性愛男性間のHIV感染のリスク上昇などを含めて報告されている。各国の文化や宗教的価値はそういった問題よりも重要なのだろうか?

性の健康や権利についての普遍的な定義は絶対に必要だ。WHO(世界保健機関)の専門委員会は40年にわたり、性的健康は身体的、感情的、精神的健やかさ、そして性に関連した社会の健全さを含み人権や個人の自主性を尊重することで支えられると認めている。しかし、この定義や義務が、総会参加国によっては拒否されると考えるからか、WHOが世界保健総会に提出したことはない。

しかし、現在では世界は合意形成に動きつつある。国連総会では先月から「サービスの利用を確実にする」という遠回しの表現で、家族計画や性感染症の治療等を含む、性および生殖に関する保健医療サービスも包含する、2015年以降の「持続的開発目標」を議論している。

性交渉相手の選択、結婚の時期や相手のみならず結婚そのものについての選択の権利や、性的な誘惑を断る権利、同意している成人の買春を断る権利も性の権利に含めるべきだろう。法的に同意ができない子供も、もっと保護されるようになる。性交渉を相手に強制しないようにし、安全で満足できる性生活をしていかなければならない。権利と責任の法制化こそが、誰からも反対されない性的サービスである。

週刊東洋経済2014年11月1日号

サラ・ホークス

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南アジアに20年以上滞在し、HIV(エイズウイルス)など性感染症を含む性関連の病気を研究。

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ケント・ブース

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政策研究家、著述家で社会正義主唱者。

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