デフレとの闘い 日銀副総裁の1800日 岩田一政著 ~当初からデフレ均衡の近傍にあると認識

デフレとの闘い 日銀副総裁の1800日 岩田一政著 ~当初からデフレ均衡の近傍にあると認識

評者 BNP証券チーフエコノミス 河野龍太郎

 本書は、2003年3月から5年間にわたり日銀副総裁を務めた著者が、金融政策に関する考えをまとめたものである。その5年間は激動の時期で、03年の量的緩和策の積極的拡大と解除条件の明確化に始まり、06年には3月の量的緩和解除と7月のゼロ金利解除という歴史的な出口政策も遂行されている。

金融政策決定会合の議事録は公開まで10年を要する。このため、本書はギリギリの政策判断を描いた生々しい政策現場の回顧ではなく、経済学者という出自を生かし、当時どのような理論に基づいて中央銀行が思考し政策を運営していたのか、その時々のトピックスを交え論じている。各国の中央銀行家や世界トップレベルの金融政策の研究者とのやり取りが描かれ、最新の経済理論が実際の政策へとつながる様子が明らかにされている。特に、著者の退任直前の07年8月に米欧でクレジット・バブルが崩壊したが、それ以前から危機の原因となる金融的不均衡の蓄積について、各国の中央銀行家や専門家の間でさまざまな議論が行われていたことが示され、興味は尽きない。中央銀行の思考の前提となる最新の金融政策論を平易に解説している点でも、有用である。

副総裁に就任する際、著者は日本経済が不良債権とデフレという「双頭の竜」によって苦しめられ、不良債権の早期処理と経済活性化で政府が自然利子率を高めると同時に、日銀が実質市場金利を低めに保つことで金融政策の有効性を高め、双頭の竜を退治しようと考えていたと言う。不良債権竜は退治されたが、デフレ竜は退任後に息を吹き返し、息の根を止めていなかったことの無念さが伝わる。

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