中国の工場、「ロボット投資」の問題点 <動画>政府が推奨する自動化投資の功罪

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ロボット軍団は中国の生産性の問題を解決するのだろうか。

中国は生産性の問題を抱えており、ロボット軍団が企業の競争力を回復させ経済を立て直してくれることを願っている。

それは可能なのだろうか。ロイターのリポーター、ピート・スウィーニーは次のように説明する。「私は今、クカ・ロボティクス社にいます。ここでは、中国の工場で働く新しいロボットの一部が組み立てられています。ロボットたちは重く、金属の鎧で身を固めており、鉄に穴を開けたり、自動車を片手で持ち上げたり、1日24時間、週7日休まず働き続けることができます。時々油をさす必要があるとしても、決して賃上げを要求せず、健康保険も不要です。さらに、普通の人間なら障害を負ったり死亡したりするリスクのある仕事もできます」。

中国の工場労働者の賃金が上昇して数も減少し、エネルギーその他の価格が上がるにつれて、マネージャーたちはこうしたロボットが生産性を引き上げてくれると期待している。

この動きは2013年に中国を産業ロボットの世界最大の市場にした。おそらく2014年も世界最大の市場であり続けるだろう。

投資家たちの興奮はすでに明白だ。リストアップされた中国企業はロボットによるオートメーション化に与えられる補助金に飛びついている。その引き換えとして、ロボットへの投資をした企業の株価は高騰している。

政府がロボットの製造や使用を推奨

ナレーションは英語です(音量にご注意ください)

同時に地方政府が、このゲームに参加し始めている。地元企業に産業ロボットを自ら製造するように、あるいは自社の製造現場で使用するために購入するよう勧めているのだ。

アナリストたちは、産業ロボットはまだかなり高額であり、投資の回収には2~3年かかると指摘している。

理想的な世界、理想的な市場においては、マーケットへの参入者が増えていけば、品質が向上すると同時に競争によって価格が下がる。しかし、中国におけるロボット需要の増加は、中国地元のロボット企業の需要の増加を意味してはいない。

結局のところ、ロボット産業は、すでに世界的な競争が激しく、利益は比較的薄いと指摘する。彼らは「必要なのは技術革新だ」と言う。しかし中国では、地方政府は技術革新の推進を得意としてはこなかった。彼らは、ほとんど手を加える必要のない、成熟した製品を好むのだ。

残念ながらこの態度は、多くのロボット企業を生みだした。すなわち、特別の能力を持っていない企業が政府運営の銀行からの多額の借入金に頼ってこの薄利ビジネスに参入している。こうした企業は、事業に行き詰まった場合には地方政府による救済措置によって救われると考えている。こうした状況を、地方政府が率先して推進しているのである。

だれも倒産を恐れない、だれも政府からの施しを受けられる、という状況では、仮にどんなに強い需要があろうとも、供給過剰になってしまうのは明白だ。

むろん、オートメーションを必要とする中国企業が、自らの経済力によってそのような投資をすることに疑問をはさむ余地はない。しかし当然ながら、投資回収にかかる時間だけでなくビジネスリスクの問題も存在する。しかし、戦略を持たないまま、優柔不断に産業ロボットを購入して最善の結果を得ようというのは、将来性のある戦略ではない。

確認しなければいけないのは、ロボットは中国経済に蔓延する非効率性という疫病を解決する万能策ではないということだ。中国政府はすでに市場原理が価格や供給量を決定すると公言しているが、地方政府がこの方針に沿って行動するよう動かすのにいまだ苦労している。

中国政府が直面している主な挑戦とは、中国企業にもっと多くのロボットを作らせる、あるいは中国の生産者たちにもっと多くのロボットを購入させることではないのだ。地方政府に注意をして、企業が自らの判断でビジネス上の決定をするよう促すことである。

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