MRJは三菱の航空機事業に何をもたらすか 三菱重工のキーマン、鯨井洋一副社長に聞く

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――ボーイングが開発を進める次期「777X」でも、現行の777と同じ部位の製造を担当することが内定しています。

われわれの品質、納期の正確さなどが評価された結果だと思っている。現行777と同じ部位(後部・尾部胴体、乗降扉)の担当なので、今までの経験がそのまま活かせ、スムーズな立ち上げが期待できる。777は累計販売機数が1000機を超す大型機のベストセラーだ。その後継となる777Xも長期に渡って多くのセールスが期待されるだけに、今回の決定は非常にありがたい。

「緊張感、危機感がある」

――ただ、ボーイングは最近、大幅なコスト削減協力をサプライヤーに求めています。次期777Xでは、現行777より2割以上のコスト削減が要求されているという話も聞かれます。

取引条件の中身については言えないが、ボーイングとしても、エアバスとのシェア争いが激化し、コスト競争力の向上が重要な課題になっている。当社はボーイングから仕事をもらっているのだから、価格面でできる限り協力していくのは当たり前のこと。別に驚くことでも何でもない。それが嫌なら、アジアなどほかの国に仕事が行くだけだ。

厳しい要求に応えつつ、利益も確保するには、自分たちのコストを徹底的に下げないといけない。従来とはまったく違った造り方、生産革新が必要だ。次期777Xでは機械やロボットによる工程を大幅に増やし、極限まで自動化した生産ラインの実現を目指す。787向けの複合材主翼にしても、生産性をさらに上げるための改善策を継続的にやっていく。

――機体構造部位の受託製造ビジネスは、いずれはアジア、中東などコスト競争力のある国に奪われてしまうのでは?

たとえば、韓国や中国の企業は、ボーイングやエアバスからもっと多くの仕事をもらおうと、すさまじい設備投資をやっている。じゃあ、彼らがわれわれと同じ品質やリードタイムですぐにできるかというと、それは難しいとは思うが、大きな脅威であることは間違いない。新しいことにチャレンジし続けないと、すぐに取り残され、海外の企業に仕事を取られてしまう。そういう緊張感、危機感はすごくある。

渡辺 清治 東洋経済 記者
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