産業天気図(鉄鋼) 中国の成長を満喫、来期は新日鉄、JFEの首位争いに注目

鉄鋼大手の業績が好調に推移している。粗鋼生産は2002年度、1億0979万トンと過去5番目の高水準を記録したが、今2003年度も4~7月まで年率1億1000万トンペースで推移。8月は電炉の減産でやや減速したが、それでも1億0889万トンと高原をキープ。、今年度後半は新日本製鉄や日新製鋼の高炉改修などマイナス要因があるものの、中国を中心としたアジア向け輸出や自動車、建設機械向けが好調を維持、粗鋼生産は1億1000万トン前後と高水準を維持する見通しだ。
 高炉各社の業績も、JFEホールディングスは、2003年9月中間期の連結営業利益を期初予想の870億円(前年同期比74%増)から1000億円(同100%増)、2004年3月期通期も2100億円(前期比43%増)から2400億円(同63%増)と上方修正。新日本製鉄の場合、名古屋製鉄所ガスホルダーの火災事故が最大300億円の減益要因となるが、実質的にはJFEと同様、増額となる見通しのほか、住友金属工業、神戸製鋼所も2003年9月中間期予想を増額修正している。
 
 垂直分業と業界再編が進む
 
 なぜ鉄鋼各社の業績が好調なのか。そしてこの好調さはいつまで続くのか。業績好調の直接の要因は、中国経済の成長だ。中国の鉄鋼需要(見掛消費量、粗鋼生産+輸入−輸出)は、2001年、1億7420万トン、前年比23%増を記録したのに続いて2002年は2億1120万トンと2億トンの大台乗せを実現。2003年も、春先こそSARS問題が心配されたが、それも終息。2割増ペースで推移し、アジア地域の需要を牽引している。
 しかし、高炉各社の業績好調の理由はそれだけではない。アジアとの垂直分業が進展する一方、日本でも業界再編が進捗するなど、鉄鋼各社を取り巻く環境が構造的に変化してきていることが大きな要因となっている。
 アジアでは、1997年の通貨危機前、各国で高炉から熱延鋼板までの製鉄所の新設計画が打ち出されていた。ところが、通貨危機でそれも頓挫。その一方で、上工程(高炉から熱延鋼板)に比べてコストが安い冷延鋼板、表面処理鋼板など下工程の増強が行われた結果、その材料となる熱延鋼板が不足、日本の鉄鋼メーカーが上工程、アジア諸国のメーカーが下工程を分担する垂直分業体制が確立。日本からの輸出を押し上げる形となっている。
 一方、国内では業界の再編が進んだ。2000年のゴーンショックを引き金とした自動車用鋼板でのシェア争いの激化が鉄鋼各社の収益悪化に拍車をかけた結果、NKKと川崎製鉄の経営統合(JFEホールディングス)、新日本製鉄、住友金属工業、神戸製鋼所の相互提携によって2大グループへの集約化が進捗。各社とも従来の数量重視から価格是正の姿勢に転換した結果、前2003年3月期末には自動車用鋼板の値上げを実現するなど、価格の低下に歯止めをかけることができた。
 こうした構造転換の結果、高炉大手は中国を中心とするアジアの鉄鋼需要の増加を満喫、業績を押し上げる原動力となっている。

中期的にも好循環が続く

鉄鋼需要は、1人当たりの需要が100キログラムを上回ると、国のインフラ整備や乗用車、電化製品の普及によって急速に増加する。日本では1950年代に100キログラム/人を上回り拡大期入り、韓国も1970年台前半に拡大期を迎えた。中国の場合、100キログラム/人を上回ったのは1999年。これから本格的な拡大期に入ることになる。さらに2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博もある。今後、万博までの間、多少の波はあっても基本的には右肩上がりの成長が続くとの見方が有力。高炉大手にとって大きな追い風となることが期待できるだろう。
 なかでも2005年3月期以降、業績の向上が期待できるのが新日鉄だ。新日鉄の今2004年3月期は、名古屋製鉄所の事故で営業利益段階で最大250億円、純利益では300億円の負担が発生する。さらに5月の君津製鉄所の第4高炉の拡大改修、2004年春の大分製鉄所第2高炉の拡大改修で200億円のマイナス要因となっている。しかし、2005年3月期は、こうした負担要因が解消、単純計算でも名古屋製鉄所の火災事故によるマイナス分250億円、高炉の拡大改修効果300億円(拡大改修分200億円、スクラップの使用量減で100億円)のプラス効果が期待できる。2003年3月期に続いて今2004年3月期もにJFEホールディングスに利益トップの座を明け渡した新日鉄がどこまで巻き返すことができるのか。両社の首位争いに注目が集まりそうだ。
【野口晃記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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