妖怪ウォッチとアイカツ、人気の「共通点」 現実以上、ファンタジー未満?

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市場は500億円以上

妖怪ウォッチのビジネスモデルは、こうしたパートナー企業との連携が特徴の一つ。各企業が取り扱う製品も単独で売り出されるのではない。玩具の妖怪ウォッチは、ケータがゲームやアニメで身に着けているものと同じデザインで、ファンならばどうしても欲しくなる。妖怪メダルのQRコードを読み取ると、ゲームの中でその妖怪を仲間にできる。ミリオンセラーを達成したコロコロコミック9月号の付録は、妖怪メダルだった。

さまざまなチャンネルでファンにアプローチするこうした戦略は、「クロスメディア」と呼ばれる。年末には初めての映画も公開される予定。特典として妖怪メダルの付いた前売り券50万枚は、すでに完売した。

ゲーム産業に詳しいSMBC日興証券の前田栄二シニアアナリストは言う。

「2014年度、妖怪ウォッチ関連の市場は500億~1千億円に達すると予測している。キャラクター商材で、これだけの規模をたたき出せば、10年に1度どころのインパクトではない。ぶっちぎりの存在です」

ただ、「クロスメディアだから成功した」と単純に結論づけるのは早計だろう。前田さんも「クロスメディア的な戦略をとった企業やコンテンツは以前にもあった」と話す。では、何が妖怪ウォッチをここまでの“お化けコンテンツ”に仕立てたのか。前出のさやわかさんは、現代という時代の空気感が巧みに取り込まれていると指摘する。

1990年代までにヒットしたゲームやアニメは、「ここではないどこか」を目指して冒険の旅に出て、悪を倒すことが目的だった。一方、妖怪ウォッチはといえば、「敵のボスと争うことより、日常の生活空間に目を向けている」(さやわかさん)

アニメの第1話で、妖怪ウォッチを手に入れたケータ。だが、その後も「冒険の旅」は始まらない。そこで描かれるのは、友達との間のちょっとしたトラブルや、小学生なら誰でも感じるような学校での悩みなどだ。

新自由主義への反動

身の回りでトラブルを引き起こすのが、妖怪たち。例えば、部屋の中にいる人たちの雰囲気をどんよりと悪くして、もめごとを引き起こす「ドンヨリーヌ」によって、ケータの両親が夫婦げんかをする。妖怪が見えるケータは、その妖怪と友達になることで問題を解決する。

「今の子どもたちはコミュニケーション志向なのだと思う。家族や友人をないがしろにして、自分だけが競争で勝てばいいとは思っていない。これは広い視点から見ると、2000年代前半に支持を集めた新自由主義的な競争社会への反動と読める。仲間を蹴落としてでも上を目指すのではなく、助け合って協調する。妖怪ウォッチは、社会の病に対する処方箋なのかもしれません」(さやわかさん)

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