アメリカ経済の低迷がこれからも続く理由--ケネス・ロゴフ ハーバード大学教授

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アメリカ経済はもたつきながらリーマン・ブラザーズ破綻から2周年を迎えた。景気は低迷し、失業率は10%弱の泥沼状態にあり、大幅な改善は見込めそうにない。11月の中間選挙を控え、国民が「超大型景気刺激策でも事態を変えられなかったのはなぜか」と疑問を抱くのも無理はない。しかし、それ以外に何ができたのであろうか。

その疑問に対する正直な答えは、「特効薬など存在しない」ということだ。ただ、そんな答えを聞きたいと思っている有権者はほとんどいないだろう。現在の穴は10年以上かけて掘られたものであり、そこから抜け出すには時間がかかる。私はメリーランド大学のカーメン・ラインハート教授と一緒に800年にわたる金融危機について分析した本を昨年出版した。その本の中で、「深刻な金融危機の後遺症により景気回復は遅れ、長期にわたって高失業率が続く」と警告した。

なぜ金融危機後に雇用を増やすのは難しいのか。理由の一つは、金融システムの修復に時間がかかるからだ。巨額の税金を金融機関に注入しても、過剰な借金を抱えた社会を萎縮させている深刻な問題を解決することはできない。国民は、借金をして浪費にふけった。住宅価格の天井知らずの上昇が、すべての債務を洗い流してくれると考えていたのだ。当時は、世界中から資金が流入し、すべてがただで手に入るように思えた。

現在、多くのアメリカ人は、減税によって民間消費を刺激すれば、問題は簡単に解決できると信じている。確かに減税は、長期的な投資と成長にとって悪いことではない。だが、減税にはいくつかの問題がある。

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