東証の独占を揺るがす私設証券市場・PTSの潜在力と限界

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 「米国のように最良価格で一律に決めていいのか」(東証の長谷川氏)との問題意識はあってしかるべき。欧州ではより総合的な判断を求めている。ただ、日本は裁量が大きすぎるとの批判もまたある。機関投資家の受託者責任を含め、最良執行のあり方を考え直す必要はあるだろう。

一方、PTSは上場審査や売買審査のコストも払わず上場株を売買できるため、“タダ乗り”との見方もある。PTSには売買代金1社10%の上限規制があるが、PTS乱立で市場が分断し、東証の価格発見機能を損ねては元も子もないとの議論だ。米国で5月に起こったフラッシュクラッシュ(瞬時の株価暴落)の原因には、行きすぎた市場の分断やHFTへの取引集中も指摘される。

また欧米では、リーマンショック後の株式市場の低迷や手数料競争の結果、取引所がPTSを買収するなど再編も激化しており、チャイエックス欧州法人も未公表の会社から買収を持ちかけられている。株式市場は国家経済の中枢的インフラであり、安定運営は必須条件だ。

日本での市場間競争は新たな段階に入る。投資家の利益と市場の活性化を第一義に置いた、健全なる競争を追求していく必要がある。

(中村 稔 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2010年10月9日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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