空前の大ヒット監督、「タイの映画事情」を語る 「国内映画が発達している日本は特殊です」

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――現在のタイ映画の年間制作本数は30本ほどと聞きましたが。

©2013 Gmm Tai Hub Co.,Ltd. All Rights Reserved.

もちろんその年によって制作本数は変わります。100本くらい制作されたような黄金時代もあれば、10本くらいに落ち込んだ年もありました。しかし、『愛しのゴースト』がヒットした後は、タイ映画も儲かるんじゃないかと思って、投資をしてくれる人が増えてきました。でもほとんどが赤字ですね。タイには優秀な脚本家が足りないんです。それをどうにかしないと、タイ映画をめぐる現状は変えられないと思います。

(『愛しのゴースト』と同じ題材を扱った)『ナンナーク』を撮ったノンスィー・ニミブット監督は、タイ映画の救世主と呼ばれていますが、彼はCM業界から映画界に転身した人で、そこからプロダクションの質が上がったんです。そこからタイ映画に興味を持つ人が少しずつ増えてきたんです。

CM制作はテクニックを磨くのに役立つ

――タイでは人材輩出の場としてCMがあるということなのでしょうか?

CM出身の監督もいれば、テレビ出身の監督もいます。自分はCM出身ですが、CMは非常に丁寧に映像を作る業界なので、質の高い映像が作られる。テクニックを磨く上ではとてもいい環境だと思います。

――『愛しのゴースト』がタイ映画復権の起爆剤になるんじゃないですか?

(撮影:田所千代美)

そうだといいのですが。実際に観客動員数(およそ600万人、タイの人口は約6700万人)を聞いて、タイにも潜在的な観客がいるんだというのが驚きでした。劇場は連日満席という状態は久しぶりの現象だったんです。

タイ映画界を盛り上げるためにも、こういう作品が続けばいいのですが、それがいつ出てくるのかは分からないですね。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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