産業天気図(証券)土砂降りから一転青空へ。ただし、個人向け証券会社の再編続く

雨のち晴れ。証券界の前2003年3月期決算は上場20社のうち14社が経常赤字、4社が減益という惨憺たる状況だった。ところが、今2004年3月期決算予想は全上場企業が最終黒字となる見通しで、土砂降りが突然終わり青空が広がった。
 きっかけは、5月ゴールデンウイーク明けのりそな銀行に対する公的資金注入報道。他の銀行株への買い安心感が市場に広まったことから、日経平均株価は4月28日の最安値7607円88銭から反転し上昇トレンドに入った。9月に入っても1万円台を維持したように、上期はこの4割近い株価上昇の恩恵を受けて、ITバブルの2001年3月期以来の好決算となった模様だ。
 ところで証券界は、証券税制の優遇措置への期待感はあったが、相場自体が急浮上する神風は誰一人予想しなていなかった。むしろ、相場が8000円前後でも収支が均衡するように、稼働率が落ちた支店と人員を削減するなど販管費の絶対額を落とすことに集中。また、株式委託手数料に依存しない商品構成を目指し、外国債券・投信の販売シフトやトレーディング部門の充実に重点を置いてきた。こうした自助努力による収益体質強化を行っていたところに、株式取引が大商いとなったため、一転して上場証券全社黒字を達成できる見通しとなったといえる。
 なかでも、野村ホールディングスは「株式市況の影響を受けにくいバランスがとれた収益構造」(野村証券国内営業担当の柳谷孝専務)を業界でいち早く築き、ITバブル期を
上回る利益(米国基準の税引き前利益は今期3080億円予想)を稼ぐ勢いだ。また、前
期は収益がほぼ横ばいと苦戦した松井証券だが、今期に入っての上げ相場で、月次決算は新記録を更新、ついに9月は1日平均注文件数で初の8万台(前年同月は4万台)を突破し、下期は上期を上回る営業収益の伸びが見込まれる。
 ところが、非ネットの中小証券をみると将来の企業存続に対して、決して楽観視できない状況が続いている。泉証券は筆頭株主の住友生命が経営権を移譲、2004年4月から三井住友銀行傘下のSMBCフレンド証券に吸収合併される。泉証券は前期まで赤字であったが、今期は株価反転で黒字基調で業績は推移している。しかも株主資本は業界有数の充実ぶりを誇り、当面は単独で生き残れる体力はある。それでも激動する金融証券市場を単独で生き残る社内の人的資源に乏しく、従来のように親会社が幹部社員を派遣する余裕もなくなった。先物やデリバティブ等最先端の個人向け金融商品を販売する力量もないことから、資本が充実している今こそ有利な条件で売りに出す決断をしたとみられる。
 実際、金融庁は個人向け証券に関しては、全国をカバーする大手と地方に根付く地場、ネット専業の3業態に集約する意向だ。よって、泉証券のように都市圏が営業基盤の中小証券は、株価回復で一息付いた今こそ身売りのチャンスと、廃業や合併、経営権の移譲等M&Aが続くと予想される。
【古庄英一記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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