年配社員は「絶滅種」IBM"年齢差別"文書の中身 競争力強化へミレニアル世代との入れ替え指示

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プラット氏によると、IBMは2010年から2020年にかけてアメリカで50歳以上の従業員を1万人以上採用し、その間のアメリカIBMにおける従業員の年齢の中央値は48歳で一定だったという。ただ、同期間にアメリカで何人の従業員を抱えていたかについては、明らかにしようとしなかった。

非営利の調査報道サイト「プロパブリカ」は2018年の記事で、IBMには年配従業員を若い層に置き換える明らかな戦略が存在し、これはクラウドサービス、ビッグデータ分析、モバイル、セキュリティー、ソーシャルメディアといった最先端分野での市場シェア獲得を目的とする当時のジニ・ロメッティCEOの決定から来ている、と書いた。一部の内部計画文書に基づく同記事によると、IBMはこれらの分野で勢いを得るには、若い従業員の比率を高める必要があると考えていた。

封印を解かれた文書に書かれていたこと

アメリカ雇用機会均等委員会は2020年に調査結果を発表。「IBMの最上層部からのトップダウンのメッセージで、年配従業員の人数を大幅に削減する積極的な戦略を進めるようにとの指示」があったことが明らかになったとした。ただ同委員会は、その主張を裏付ける証拠は公表しなかった。

今回封印を解かれた文書はリスリオダン氏が提起した訴訟で「重要事実の陳述」として提出されたもので、そこで引用された社内メールのやりとりは、プロパブリカの報道や雇用機会均等委員会の調査結果を裏付けるものといえそうだ。同文書は、IBMの経営トップが年配従業員の割合を引き下げ、若い従業員の割合を引き上げる必要性を具体的に力説していたことを示している。

例えば、当時のある経営首脳が送信した電子メールにはこう書かれている。

「ミレニアル世代の(従業員の)比率が競合他社よりも低いという事実について話し合った。以下のデータは取り扱いに細心の注意を要するものであり、共有すべきものではないが、こうした事実があることをしっかりと頭に入れておいてもらいたい。アクセンチュアではミレニアル世代の比率が72%であるのに対し、当社は広い範囲で42%であり、多くの部門ではこの平均値を大きく下回っている。アーリープロフェッショナルの採用を進める必要があるということだ」

「アーリープロフェッショナル」とは、過去の職歴がほとんど必要とされないポジションを指す社内用語だ。

経営首脳が送信した別の電子メールは、「『赤ちゃん恐竜』(新種)に退職を勧めることで変化を加速し」、彼らを「絶滅種」にする計画に触れている。年配従業員に言及したものとみられる。

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