産業天気図(建設業) 公共投資削減継続は必至。今期は補正予算も期待できず倒産続く

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国土交通省が主要建設業を対象に調べる建設工事受注動態統計調査によると、4~8月の受注高合計は、前年同期比3.4%減の20兆3400億円となった。民間からの受注工事が同9.9%増えたのに対して、公共機関からの受注工事は14.9%の大幅減となった。建設経済研究所では2003年度の建設投資額見込み(名目)を前年度比4.7%減、2004年度も同3.4%減と推計。当面は市場の縮小傾向は続きそうだ。
 公共投資削減を進める小泉政権に加え、野党民主党も国直轄の公共事業の1割削減をマニフェストに掲げるなど、公共投資削減圧力は強まる一方。建設業界団体では下期の補正予算を要請する動きが活発化しているものの、現場では「今年は補正予算は出そうにない」(大手建設業)と諦めの声も多い。民間工事についても、「景気回復が企業の設備投資につながるまで2年ほど要する」(大手建設業)との見方が大半を占めており、受注回復までの道のりは険しそうだ。
 ただ、大手建設建設業60社が加盟する日本建設業協会が発表した会員企業の受注動向によると、4~8月の受注実績は前年同期比1%減の4兆1951億円で、建設市場全体より縮小幅は小さく、大手建設業への受注の集中が鮮明化している。特に「スーパーゼネコン」と呼ばれる、鹿島、大成建設、清水建設、大林組の受注状況は順調で、4~6月の第1四半期では、前年比約5割増となった大成建設を筆頭に、各社が前年を2桁程度上回った。第1四半期の受注は例年、年間の受注に占める割合が低いが、この状況が続いて期中完成工事が増えれば、各社が公表している業績見通しを上回る可能性もある。スーパーゼネコンに続く規模の準大手ゼネコンの中でも、財務が健全な西松建設、戸田建設、前田建設工業の3社の受注は比較的順調だ。
 一方で、債務免除を受けた準大手ゼネコンは苦戦が目立つ。熊谷組の第1四半期の受注高は前年同期から約26%減と厳しい状況。受注がさらに落ち込めば、2005年春をメドに統合を予定する飛島建設との統合計画に、影響が出るおそれもある。中堅以下のゼネコンはさらに受注減少が著しい。10月1日には、関西を地盤とする土木主力の中堅ゼネコンである森本組が、受注急減の影響もあって民事再生法を申請し事実上倒産した。関西方面は全国でも建設市場の冷え込みが厳しいが、森本組の民事再生法申請で、他の関西地盤のゼネコンでも信用不安が起こる懸念が指摘されている。
 2004年3月期決算予想では、人員削減などのリストラによって前期比で経常増益を計画する会社も多いとはいえ、市場縮小が止まらない以上、来年以降も市場全体として厳しい状況が続きそうだ。
【吉川明日香記者】
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 


(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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