マンダム対資生堂:スタイリング剤ガチンコ勝負はどこへ行く!《それゆけ!カナモリさん》

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 一方、フォグバーも弱点を克服した。ナチュラルなスタイルを訴求してはいるものの、「そうはいっても、もうちょっとホールド感が強くならないか?」というものだ。もっと髪型を遊びたい若年層に加え、髪の毛にボリュームを出したいという筆者のようなお年頃の層には切実な願いである。そこで発売されたのが、CMで「バリカタ新登場」と紹介される濃紺のボトル。「フォグ バー 万能ストロング」だ。使ってみると、確かに今までのラインナップでは一番整髪力が強かった赤ボトル以上に髪のまとまりや立ち上がりがいい。しかし、ごっつりと作り込むような髪型に向くほどではない。ナチュラルが売りのフォグ バーにとって、理論の自縛化を起こさないギリギリの線で、ワックスにユーザーが流出しないための調整をした結果だと思われる。

 かつて資生堂は男性用整髪剤市場のトップにたち、他社に先駆けてワックス整髪剤を投入したものの、後発のマンダムが木村拓哉をイメージキャラクターにし、トップの座を奪った。時は巡り、再び、資生堂がミストという新市場を開拓し、「バリカタ」でさらに攻勢をかける。マンダムは、あくまでワックスにこだわりながらも、ミストの利点も実現し、再び木村拓哉を擁して、対抗を試みている。

 週刊ダイヤモンドの同記事では、現時点ではワックスが男性用整髪剤市場の主流であることには変わりないとしながらも、全体に占める構成比は30%を割り込んで減少を続けており、かたやミスト市場の構成比が十数パーセントまで急拡大していると分析している。

 両者の怨念さえ渦巻くような苛烈な戦い。今年のシェアトップの座に、いったいどちらが座るのか。しばらくは、勝負の行方から目が離せない。

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2010年10月1日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。
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