出演者全員「素人」のラジオ番組ができたワケ 本物の「失敗できる場」が若手を育てる

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その一方で、「Life」がれっきとした本物のラジオ番組であるということも重要だ。今はパソコンとインターネットを活用すれば、自分でラジオ番組風のものを作り、配信することは容易だ。中には優れたものもあるのだが、特に若い人の場合、自己満足で終わってしまうことも多い。「Life」の場合、日曜深夜とはいえ、数万人規模のリスナーがいる。

“実戦”だからこそ、反省もするし、自信になる

スタッフサイドからのフィードバックもあり、またつねに番組の質を保つために全力を尽くすメインパーソナリティ・鈴木謙介さんの気迫に触れる緊張感もあるだろう。あくまでも“実戦”だからこそ、失敗すれば反省もするし、成功したときには自信になるのだ。

もちろん番組としては、毎回できるだけよいものにしたいと思っている。ただ、その都度の結果のみを優先すると、新しい人に賭けることができない。実績がある人のほうが安心だからだ。結果を出すことを目指しつつも、新しい可能性のほうをより重視する、そんな腹のくくり方ができる場が必要だ。僕自身にとっても、現在のメインの仕事である「荻上チキ・Session-22」をはじめ、「Life」での実験がその後に結び付いていることが多い。

ベンチャー企業だったり、業界自体が新しいときには新しい人がどんどん出てくる。また、大きな利益が出ていれば、多少の失敗があってもほかで取り戻せるので大胆なチャレンジができる。しかし、成熟、低成長の時代になると、どうしても保守的になりがちだ。今の日本の社会全体を見渡してみても、「失敗もできる“実戦”の場」を持つことは重要なのではないだろうか。

構成:宮崎智之

「週刊東洋経済」2014/10/18号

 

 ☆★☆お知らせ☆★☆

この記事の筆者・長谷川裕氏がプロデューサーを務める「文化系トークラジオLife」が、10月26日(日)26:00~(10月27日2:00~)に放送されました。テーマは「フィジカルの逆襲」。過去の放送は、ポッドキャストでも聴けます。

長谷川 裕 TBSラジオ プロデューサー

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はせがわ ひろし / Hiroshi Hasegawa

1974年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、1997年にTBS入社。2001年からTBSラジオの番組制作を担当し、「荻上チキ・Session-22」、「菊地成孔の粋な夜電波」、「森本毅郎・スタンバイ!」、「アクセス」などの番組を手がける。2006年に立ち上げた「文化系トークラジオLife」は、優れた放送番組に贈られるギャラクシー賞大賞を受賞(2008年)、同番組では「黒幕」としても活躍している。共著書に『文化系トークラジオ Lifeのやり方』、『文化系トークラジオLife』などがある。@Life954

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