【産業天気図・10年10月~11年9月】米国経済の回復鈍化、円高も厳しい。産業界の景況感は後半大幅減速へ

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 2008年秋のリーマン・ショック以降、緩やかな回復をたどってきた日本の産業界。だがここに来て、景況感の展望は急速に不透明感を増している。各種経済指標から米国消費の回復鈍化が伝えられ、欧州でも財政不安がくすぶり続けている。対ドル・ユーロでの円高進行も顕著で、大型製造業の業績にとっては大きなマイナス要因となっている。

    典型例は自動車業界。「会社四季報」記者の見立てによると、自動車業界の景況感は2010年10月~11年3月の「晴れ」が、11年4月~9月には「曇り」に後退する見通しだ。最大の要因は円高。大手完成車メーカー各社は1ドル=90円、1ユーロ=120円を前提に今11年3月期の事業計画を立てていたが、足元の相場は前提よりも大きく円高に振れている。加えて、国内のエコカー補助金制度の終了など、政策需要の剥落も痛い。

   電機産業も先行き不透明感が濃厚になってきた。家電メーカー各社は前10年3月期まで、人員・拠点リストラなどの構造改革を断行しており、その効果で今期業績は大幅に改善する。だがその改善幅は、急激な円高で一定程度縮小する可能性が高い。新興国需要は強いが、同時に製品単価の下落を招く要因ともなっている。最終製品メーカーの業績回復腰折れ懸念は、川上産業にも影響しており、半導体や電子部品といった業界も後半には景況感が悪化する見通しだ。

   円高環境では輸入メリットを享受できるはずの内需型産業も楽観視できない状況だ。アパレル、百貨店などは消費不況が足かせ。コンビニエンスストアもたばこ増税による客足減が懸念材料。建設業も民主党政権による政府予算削減が打撃となっている。

   ただ、厳しい環境の中でも好調を維持している産業もある。たとえば食品は、原料価格の安定から主要各社の業績に堅調が見込まれる。また、空運は成田・羽田空港で相次ぐ国際線機能拡充が刺激となって、主要エアラインの活況が見込まれている。

   ひとたびは回復をたどった国内産業界。今後また業績の後退局面が予想され、主要各社にとっては、景況感が比較的良い新興国市場へ人員・拠点を再配置するなど、経営判断が求められる時期となっている。発足したばかりの新しい民主党内閣にとっても、規制や税制の見直しを通して、新たな成長領域を生み出す国家戦略が喫緊に求められている。

  ※次ページに業種別の天気一覧
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