議員辞め「経営専念」、弁護士ドット元榮氏の真意 代表復帰、次の参院選「不出馬」の胸の内を聞く

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――具体的に今後、弁護士ドットコムをどう成長させていきますか?

現状では既存サービスにおいて、そのユーザーへの提供価値を最大化できていない。まずはここをしっかりと伸ばしていく。

無料法律相談や弁護士を検索できる「弁護士ドットコム」では、人工知能(AI)を積極的に活用したい。そうすれば、もっと多くの人に利用してもらえるし、相談者と弁護士をつなぐマッチングの最適化につながる。

――弁護士支援サービスはどうでしょう?

こちらももさらに拡充できる。弁護士業務には、今でもアナログな部分が多く残っている。そういう中で、AIができることはたくさんある。例えば相談者とのやりとりを自動で議事録にできるとか、内容証明をたちまち作ってしまうとか。

相談を受けている間に相談メモができて、関連する判例がポップアップで出てくるようなサービスも考えられる。いわば、弁護士ドットコムが弁護士の「外部脳」になるイメージだ。

2021年からPKSHA Technologyの社長で、AIの研究者としても名高い上野山勝也さんに社外取締役として参画いただいている。それも、弁護士の現場にAIをもっとインストールしたいという思いがあったからだ。

民事裁判のデジタル化は大きな商機

――今国会中にも、民事裁判のデジタル化を盛り込んだ民事訴訟法の改正案が提出される見通しです。

これは弁護士の人数増に次ぐ、司法制度の大改革。改正案には訴状のネット提出や、口頭弁論でのウェブ会議の活用、判決文の電子交付などが盛り込まれる予定だ。これにより弁護士業務の生産性が大幅に高まる。

われわれもこうした国の動きと連動できるように準備している。裁判所のシステムとAPIで連携して、弁護士業務を支援する機能を拡充する予定だ。今後は判例データベースの会社との提携も検討している。

――もう1つの柱、電子契約サービス「クラウドサイン」でも契約送信件数は着実に伸びています。ただ、GMOグローバルサイン・ホールディングスの「GMOサイン」など、競争も厳しいのでは?

競争が厳しいとは思っていない。送信件数のほか、導入社数についても、算出方法を競合に合わせれば、間違いなくわれわれがトップシェアだ。

今後は契約のライフサイクルマネジメントにフォーカスする。これまでは契約のサイン(締結)の部分に集中していたが、今後は契約書の作成から、レビュー(審査)、サイン、さらに保管・管理まで、そのすべてをクラウドサインで取り込んでいく。

契約のプロセスを幅広く取り込むことで「クラウドサイン」のさらなる成長を狙う(撮影:尾形文繁)

例えば契約書の作成は、アメリカではすでにリーガルテック企業のロケット・ロイヤーやリーガルズームなどが手がけている。離婚を考えている人が婚姻期間、財産などの質問に答えていくと、協議書ができあがるといったものだ。ビジネスの世界でも、契約書のひな型作りに使われている。

契約レビューもビジネスをするうえでとても大切なプロセスで、AIによる改善余地が大きい。ただ、法律事務は弁護士にしかできないという規定が弁護士法にあり、それに抵触する可能性がある。

――すでにレビューを手がけているベンチャーもあるとのことですが。

われわれにとってコンプライアンスの遵守は絶対条件。やるぞとは決めたが、グレーな部分は慎重に確認しながら進めたい。

保管については、すでに一部でサービスを始めている。われわれにはサインのサービスでたくさんのユーザーがいるので、クロスセルを進める。サイン以外の分野でも、すぐにトップシェアになれると思う。

当社ではほかにも「税理士ドットコム」や、企業法務に特化した「ビジネスロイヤーズ」を展開しており、それらもオンリーワンのサービスであると自負している。こうした既存事業の伸び代はまだまだある。既存事業だけで、売上高400億円とか、500億円を十分に目指せる。

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