「奨学金570万円」借りた男性が語る「超逆転人生」 貧困DV家庭出身者が大学院まで進んだ結果

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結果、高校時代と変わらずバイト漬けの生活が始まったが、それでも、木村さんは学生生活を満喫していたという。

「ファストフード店を皮切りに、塾講師、イベントの設営、家庭教師……などバイトはいろいろやっていました。18歳になると深夜バイトができるようになったのはありがたかったですね。時給が25%上がるので(笑)。

それでも、『大学に入るためにあれだけがんばったんだから、少しは遊びたい』という思いもあって、楽しい学生生活を送ろうと心がけていました。できる限り授業には真面目に出つつ、サークル活動を積極的にしたり、友達と旅行をしたり、徹夜で麻雀して1限を逃したり。ちゃんと、やりたかったことはやった感じですね」

大学生らしい生活をしつつも、決して散財していたわけではなかったが、実験などもあってなにかと忙しい理系の身では、バイトだけで授業料を稼ぎ続けるのは困難だった。結果、木村さんは第二種奨学金(有利子)も借りることを決意する。この時点で、返還額は合計で約360万円。

そして、3年生になってからは、就職と大学院への進学で悩むことになる。ここでも気になるのは学費であった。

「僕の人生の中で1番大きな決断が大学受験なら、2番目は大学院への進学。家庭の状況を考えると『少しでも働いて、稼がなくてはいけない』という気持ちもありましたけど、当時は『もう一段上の勉強をして、もっと高い教育を受けたい』と思ったんです。

大学院でかかるお金を調べていると、内部進学なら30万円の入学金免除があることを知りました。そうして、『ここまで来たら進学しよう! 就職してちゃんと返そう!』と決心したという感じです。弟たちはとっくに働き始めていたので、『まだ勉強するの!?』という反応でしたね」

こうして、木村さんはさらに奨学金を借りた。どんな返済生活になるかまったく予想できないなか、奨学金は合計で約570万円に達していた。

「返済を大変と感じたことはない」

だが、この選択が木村さんの人生をより好転させた。大学、大学院で学んだ知識を活かして、誰もが名前を知るような大企業に就職することができたのだ。

「返済は毎月2万8000円を20年。それでも、新卒1年目から大変と感じたことはないです。仕事を早く覚えたかったのもあり、若い頃は毎月50〜60時間くらい 、時には100時間以上残業していたんです。僕が就職した当時は、今よりも残業への規制が緩かったんですよね。また、新卒3年目まで会社の寮に住めたことも影響しました。1年目からしっかりボーナスがもらえる会社だったのもよかったです。もっとも、『これなら余裕で返せるな』と思ってからは、財形貯蓄と並行して、投資を始めたので、口座はわりと空ではありましたけど」

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