あの高級ホテルを売却、ヒルトン次の一手 約20億ドルで買うのは中国の保険会社

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では今回、ウォルドフの売却で手にした資金をヒルトンはどう活用するのか。開示資料によれば、米国内でのホテル買収をする方針を示している。どれくらいの規模を考えているのかは不明だが、少なくともヒルトン自身、業界のトップ5同士のメガ再編には否定的だ。

今年7月、沖縄に開業したヒルトン沖縄北谷リゾート

この5社とはヒルトン、「スターウッド」や「ザ・リッツ・カールトン」を持つマリオット・ インターナショナル、英インターコンチネンタルホテルズグループ(IHG)、仏アコーホテルズを指し、「グローバルオペレーター」と呼ばれている。

昨年夏に来日した、ヒルトンのアジア・太平洋地区のマーチン・リンク社長は「各社 5~10の大きなブランドを持っており、再編効果を出すのは難しい。下位の7、8位とか、10位台の1社がメジャー5のどこかに吸収されることはあるかも しれない」と語っていた。

「日本は戦略的に重要な市場」

またその時、日本・韓国・ミクロネシア地区の運営最高責任者であるティモシー・ソーパー氏は、「日本は戦略的に重要な市場。今後物件を増やしていくことが重要で、多くの投資をしていく予定だ」と語っている。実際、今年7月には「ヒルトン沖縄北谷リゾート」がオープンした。ウォルドーフについては、「具体的な計画はまだないが、ぜひ東京地域にも1軒をという思いはある」(リンク社長)と述べていた。

今のところ、ウォルドーフの売却による資金使途は米国としているが、アジア展開の加速に役立てられる可能性もありそうだ。そして、20年の東京五輪や増え続ける訪日外国人客をにらみ、ヒルトンから”次の計画”が発表される日が来るのかもしれない。

山川 清弘 東洋経済『株式ウイークリー』編集長兼「会社四季報オンライン」副編集長

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やまかわ きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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