産業天気図(不動産業) 大型ビルは空室率上昇に歯止めだが中小ビルは苦戦、マンションはピークアウト

大型オフィスビルの完成が相次ぎ不動産市況が軟化する、「2003年問題」は最悪期を越えつつある。生駒データサービスが10月2日に公表した2003年9月期のオフィス空室率・賃料データによれば、延床面積1万坪以上のAクラスビルの空室率は8.6%と対前期比で0.2ポイント改善。2001年3月期から1年半続いた空室率の上昇に歯止めがかかった。だが、Aクラス以外も含めた東京23区全体の空室率は7.0%と対前期比0.4ポイント上昇。築年数の経過した中小ビルではなお空室率が上昇しつつある。
 このことが示唆しているのは、三井不動産や三菱地所など大手が建設した新規の大型ビルは順調に収益化が進んでいるものの、既存の中小ビルでは依然、テナント流出と賃料の下落に苦しんでいるということだ。今後は日本経済の回復とともにオフィス需要が回復し、2004年半ばごろからは空室率も低下してくるだろうが、埋まるのは新規の大型ビルから。金利上昇という不安材料もあり、不動産会社の二極化は一段と加速する。
 一方でマンション市場は、金利先高感を受けての駆け込みが始まった。不動産経済研究所が公表した首都圏の8月の新築マンション発売は、前年同月比16%増の5493戸だった。契約率も81%と好調だった。9月2日に住宅金融公庫が貸出金利を引き上げ、金利の先高感が高まったことから、マンション会社が供給量を増やし、それが駆け込み需要を吸収した形となった。9月は秋商戦が始まり、8000戸前後と、前年同月を1割以上上回る供給があったと見られる。年末にかけて大量供給は続き、金利先高感でどこまで需要を引っ張ることができるか、不安は残る。
 ただ、マンション市場はピークアウトはしているものの意外に底堅い、というのが現状だ。首都圏の今年1~8月の累計発売戸数は5万2307戸で、前年同期比7%のマイナス。もっとも契約率は1月以降、好不調の分岐点である70%をすべて超えており、月末在庫も8月末で8237戸と、年初の1万戸超から着実に減少している。マンション市場の頭打ちは確実だが、金利先高感や景気回復期待などから、意外と大崩れせず、発売戸数を絞り込みながら徐々にソフトランディングしつつある。首都圏のマンション発売戸数は昨年まで4年続けて高水準の8万戸を超えていたが、今年も8万戸超えはほぼ確実と思われる。こうした堅調さを牽引しているのが、都心の大型物件だ。住友不動産は都心に4棟のタワーマンションが完成し、収益を押し上げる。
 しかし、総じて言えばマンション会社の収益は今期厳しい。ダイア建設が産業再生機構の支援を受けたのもマンション市況の先行き不安が1つの背景。これまで高成長を続けてきたゴールドクレストは上場来初の減益に転じる。リクルートコスモスや有楽土地などの中堅も減益となる。債務免除組では、大京は賃借料削減などのコストダウンで微増益を確保するものの、藤和不動産は減益となろう。
【福田淳記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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