【産業天気図・鉄道・バス】旅客数が緩やかに上向くが本格回復は先、流通の低迷も響き「曇り」が続く

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

鉄道・バス業界は、2008年秋から続いてきた旅客数の減少傾向が10年前半におおむね底を打った。しかし、その回復スピードは緩やかだ。また、依然として冴えない個人消費を映し、流通部門が低迷。不動産部門は概して堅調だが、業界全体の景況感は、10年10月以からの1年間、「曇り」にとどまると予想する。

東日本旅客鉄道(JR東日本)の単体の鉄道営業収入(決算の運輸収入とは異なる)は、4~8月の累計で前年同期比0.8%増と横ばい圏。5~6月は前年を上回ったが、7~8月は前年を若干下回った。また、小田急電鉄の輸送人員は4月、6月が前年比マイナスに対し、5月、7月は前年比プラス。まだ、まだら模様であり、前年比のプラス基調が完全に定着したとは言えない。だが、鉄道の旅客数は雇用環境を反映し、景気全般よりやや遅行して動く。旅客数はしばらく緩やかな回復傾向が続くとみられる。

JR東日本は、今11年3月期の業績について、営業利益3520億円(前期比2.1%増)という期初計画を変更していないが、この予想数字は上振れる可能性が高い。同社は今期の鉄道運輸収入を前期比0.1%増と見込んでいる。だが、期初に年間90億円の減収要因になると予想していた高速道路新料金制度(上限2000円)の導入が見送られた。さらに、信濃川水力発電所の発電再開に伴い、動力費が大幅に減ることも利益の押し上げ要因になる。大規模な店舗リニューアルなどで駅スペース活用(「エキュート」など駅ナカ販売)、ショッピング・オフィス(不動産賃貸)が減益でも、鉄道の回復で営業利益は3800億円程度に伸びると予想する。

西日本旅客鉄道(JR西日本)は、新幹線、在来線とも回復が鈍く、営業微増益にとどまる。東海旅客鉄道(JR東海)は、運輸収入が想定をやや上回るものの、修繕費などがかさむうえ、流通部門が厳しく、営業減益が続く見通しだ。

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