【産業天気図・工作機械】単月受注に「800億円」の天井感。円高も回復の勢い削ぎ、終始「曇り」止まり

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 内需も依然冴えない。8月受注は286億円で前年同月比では2.2倍増ながら、前月比では2.1%減と5月以降、横ばい状態。国内ユーザーの円高対応で国内投資が海外投資へ一部シフトしている実態を考え合わせると、内需復活は当面期待できそうにない。

これらを勘案すると、これまでの堅調な回復に比べると、今後については徐々に不透明感が深まる。加えて焦点となるのは冒頭記した通り、全受注の4割強を占めるまでになったアジア需要がいつまで続くかだ。アジア圏の09年後半からの伸びが急激だっただけに「11年は調整が入り、良くて微増圏では」(業界筋)との見方が浮上。メーカー各社が大赤字に陥った09年度に比べて10年度はリストラ努力等の効果も合わせ、小幅黒字ないし小幅赤字に改善するとしても、月800億円の“天井”を突き破って11年度の日本勢の収益を10年度以上に押し上げる需要拡大あるいは新規需要材料が、今は、まだ見当たらない。

「1ドル=95円程度が望ましい」と語る中村会長。だが各国のインフレ率や貿易量などを考慮した実質実効為替レートを基に、現在の1ドル=83~85円は「90年代に比べ、なお円安水準」(大学教授)など昨今の円売り介入の効果に疑問を呈し、再び円高圧力が強まる恐れを指摘する向きもある。第一、工作機械に限らず、通貨安競争は詰まるところ不毛な安売り合戦と変わらない。

中長期的には今後も新興国予備軍が次々勃興し、グローバルな市場規模が拡大するのは確実な工作機械業界。とはいえ、技術力を誇る日本勢でさえ、事業構造の抜本見直しや時代を画す技術的ブレイクスルーなどなしに、今までのような高い収益は望むべくもない。今回の回復局面は、従来の設備投資サイクルとは異なり、日本勢に全く新しいビジネスモデルの構築を迫っているのかもしれない。
(内田 史信=東洋経済オンライン)

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