チョコに惚れ、海を渡った23歳彼女の桁外れな挑戦 バイト代貯め19歳で現地へ行き受けた衝撃

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ガーナの人々に、チョコレートのおいしさを伝えたい――。そう考えた彼女は、日本から持参した米粉用のミキサーとYouTubeで調べたレシピを活用し、カカオ豆から”即席チョコレート”を自作。現地の人々に振る舞った。

「60年もカカオ農家をやっている方が、『人生で食べたものの中で一番おいしい』って言ってくれて、すごい感動的でしたね」

その後、約2カ月かけてガーナを巡り、各地でチョコレートの作り方や味を伝えるワークショップを開催した。

2018年9月に帰国すると今度は、ガーナのカカオ豆の魅力を伝えるためにショコラティエ(チョコレート専門の菓子職人)を訪問。そこで、先述したガーナのカカオ豆の買い取り制度や品質の実態を耳にする。

10軒以上のショコラティエを回りながら詳細を把握した田口さんは、「自分がガーナのカカオ豆を何とかしよう」と決意する。いったいなぜ、そこまでの想いを抱いたのだろうか。

「ガーナでマラリアにかかって命の危険に晒されたとき、ガーナの人たちが助けてくれたんです。だからとにかく、何かしらの”恩返し”がしたかったんですよね。最初は”カカオビジネスの革命”なんて考えていませんでした」

クラファンで約427万円の支援を集める

田口さんは2019年3月にガーナへ戻ると、先述した独自取引のルート開拓とカカオ豆の品質向上に取り組む。ガーナ政府のカカオ関係者には、アマンフロム村民の親戚や同級生などの”ツテ”をたどって接触した。

田口さんの活動を通して「ガーナの魅力に気づいてくれる人が増えている」という(写真:田口愛さん)

その間に、田口さんの取り組みに賛同した日本のカカオ専門商社・立花商店(大阪市)と協力関係を構築。アマンフロム村のカカオ豆を日本にコンテナ輸出するプロジェクトを進めた。そんな矢先、新型コロナウイルスの感染拡大に直面。すべての計画がストップしてしまう。

「そのとき私は日本で準備を進めていたんですけど、コロナによって計画が何も進まなくなってしまって……。正直、プロジェクトが解散の危機に陥りました。でも、どうしても諦めきれなかったんです。だから日本で何ができるかを考え抜いて、行動に移しました。

その行動の1つとして、2020年6月にMpraeso合同会社を立ち上げました。チョコレートの生産や販売をするためには、会社が必要だと思ったので。それに私は当時、まだ大学生だったので、”肩書”も必要だと思いました」

2020年8月には、ガーナで本格的なチョコレート工場を建設するためのクラウドファンディングを実施。目標額100万円に対して約427万円の支援が集まるなど、大きな反響を呼んだ。

すると今度は、クラウドファンディングの反響を目にした西武池袋本店のバレンタイン催事担当者から、出店の提案を受ける。

「西武池袋さんにお声がけいただいてから、急いで会社メンバーの自宅に工房を作って衛生許可を取り、パッケージを用意しました」

そして2021年1月、ガーナ産カカオを使ったチョコレートブランド「MAAHA CHOCOLATE」を立ち上げる。同1月に開催した西武池袋本店の「チョコレートパラダイス2021」に出店すると、連日完売となるほどの盛況ぶりを見せた。

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