トヨタ自動車、「軽」参入の不可解

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国内の販売再編は後回し?

それにしても、トヨタが国内販売で着手すべきは、チャネル再編ではなかったか。

トヨタは5月に国内生産体制の再構築を発表した。国内380万台の生産能力を、数年かけて1割強落とすとみられている。あるアナリストはこう指摘する。「4チャン+レクサス店の5チャン体制は国内市場500万台時代の産物だった。生産を1割落とすということは、すべてのレイヤー(階層)で1割ずつ何かが要らなくなるということ。国内約60車種の6車種は不要になる。販売店も同様だ」。

別の業界関係者は、「販売店の収益は、高級車クラウンがモデルチェンジする4年に1度収益がどんと上がり、残り3年間はトントンという歴史だったが、普及車であるプリウスが主力となった今、そのシナリオは崩れている」と言う。

市場の構造が変化する中では、軽という新商材を追加して当面の販売台数をカサ上げしても、一時的な効果しか生まない。根本的な課題が棚上げされたままでは、真のトヨタ復活は遠い。

(撮影:風間仁一郎)

写真は会見に臨む一丸陽一郎・トヨタ自動車副社長(右)と伊奈功一・ダイハツ社長

高橋 由里 東洋経済 記者

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たかはし ゆり / Yuri Takahashi

早稲田大学政治経済学部卒業後、東洋経済新報社に入社。自動車、航空、医薬品業界などを担当しながら、主に『週刊東洋経済』編集部でさまざまなテーマの特集を作ってきた。2014年~2016年まで『週刊東洋経済』編集長。現在は出版局で書籍の編集を行っている。

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