NPT体制に大きな亀裂 世界に核を広げる危険性

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 仮にイランが核爆弾に必要な高濃縮ウランを入手したとしても、使える核兵器にするには、(1)起爆装置の入手、(2)データを集めるための核実験、(3)核爆弾の小型化、(4)ミサイルなど運搬手段の整備、などまだ高いハードルがある。

しかし、レオン・パネッタ米国中央情報局(CIA)長官は、6月28日のABCニュースのインタビューで、「イランは2年以内に核兵器を製造する能力がある」という見解を示している。

バラク・オバマ米大統領はイランと北朝鮮の核廃絶を念頭に置いて、09年から「核のない世界」を国際社会に訴えている。オバマ大統領はイランへの軍事攻撃ではなく、ソフトパワー(説得や国際世論の力)による解決を目指しているようだ。ただ、オバマ大統領が軍事攻撃という手段を排除しているように見える現状では、イランの核開発を阻止することはたいへんな困難に思える。

可能性の高い軍事オプションはイスラエルによるイラン単独攻撃だが、これも米国の同意が必要なうえ、イランの施設を攻撃しても核開発を数年遅らせる効果しかないだろう。

両国の核共存は可能か

こうした情勢下、一部で浮上しているのが、イスラエルとイランがそれぞれ核兵器を保有しながら、中東で共存できないかという考えだ。

冷戦時代、米国とソ連がそれぞれ大量の核兵器を保有しながら、それらがかえって抑止力となり、実際に使用されることはなかった。1962年のキューバ危機では戦争寸前という危機を迎えたが、戦争は回避された。

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