「目標はアップル」、日本車両の鉄道ブランド戦略 台車や構体の技術を活用、第1弾は通勤型315系

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エヌクオリスというブランドは2021年11月24〜26日に幕張メッセで開催された鉄道技術展で初めて発表された。コロナ禍で鉄道事業者の経営が厳しくなり、新型車両を製造するメーカーの選別はますます厳しくなる。「競争力を上げるにはブランドを立ち上げることが必要だった」と鉄道車両本部の伊藤亮二担当部長が狙いについて語る。

「エヌクオリス」を初めて発表した2021年11月の鉄道技術展・日本車両ブース(記者撮影)

鉄道車両にブランドを付ける例は欧州の鉄道車両メーカーでよく見られる。たとえば、シーメンスの高速鉄道ブランド「Velaro(ヴェラロ)」の車両はイギリスと欧州大陸を結ぶ「ユーロスター」のほかスペイン、ロシア、トルコなど各国で活躍する。さらに、近郊型鉄道の「Desiro(デジロ)」、機関車の「Vectron(ヴェクトロン)」など製品ごとにブランドがある。アルストムも電車・気動車ブランド「Coradia(コラディア)」、路面電車「Citadis(シタディス)」などのブランドを持つ。

国内でも総合車両製作所は「sustina(サスティナ)」というステンレス車両のブランドを持つ。JR東日本の「E235系」と東急電鉄「2020系」は細部のデザインや仕様が異なるが、どちらもサスティナブランド。車両プラットフォームをできるだけ共通化して量産効果による初期コストの低減を図っているのが特徴だ。

建売住宅と注文住宅の違い

いっぽう、日本車両のエヌクオリスは、シーメンスやアルストムのような車両ブランドではなく、車両、台車、車両状態監視システムなどをラインナップとする技術要素を用いて顧客の課題を解決するブランドという位置付けだ。

欧州メーカーの車両ブランドとエヌクオリスの違いは、建売住宅と注文住宅の違いと捉えればかわりやすい。エヌクオリスは各鉄道事業者がどのような仕様を求めているのか、どのような路線を走るのかといった要望を踏まえて、協議を重ねながら最適な技術を組み入れて作り込んでいく。従って、今後JR東海ではない鉄道事業者向けに車両を製造する場合、その事業者の抱えている課題が315系のそれと異なれば、同じエヌクオリスブランドでもまったく違う車両になっている可能性がある。

なお、通勤車両が中心のサスティナと異なり、エヌクオリスは特急型車両も対象となる。同社が受注したJR東海の新型特急「HC85系」もエヌクオリスの技術要素が採用されている。

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