【産業天気図・食品】食品業界は原料価格安定で「晴れ」、ただ海外市場に減速の兆しも

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

食品業界の業況感は、10月以降、1年通して「晴れ」の活況となりそうだ。商品価格の下落には歯止めがかからないが、原料価格はピークアウトし安定基調だ。

原料安効果が出やすいのは、小麦粉を多く使用する製麺、製パン業界だ。日清食品ホールディングスは、麺改良に大規模投資をした高価格帯商品の人気が業績を牽引している。パン業界も、山崎製パンが販売数量自体は横ばいながらも、原料安と子会社・不二家の業績回復などがあいまって大幅増益となる見込みだ。飯島延浩社長は原料価格について、「08年のような小麦価格上昇には至らないだろう」とみている。

菓子業界も製パン、製麺ほどではないが小麦安などの影響をうけて総じて増益基調だ。
 
 食肉業界は様相が異なる。食肉メーカーは節約志向で豚・牛肉の需要が減退している。伊藤ハムやプリマハム、業務用首位のスターゼンなどが前期に引き続き苦戦を強いられてそうだ。豚・牛肉需要減退は調味料業界にも影響を与えており、すき焼きや焼き肉のたれを主力とするエバラ食品も成長が鈍化している。

ただ、業界ガリバーの日本ハムは鶏肉農場や鳥肉加工品工場を自前で持ち、圧倒的な供給能力で独走状態だ。

食品市場自体は国内では縮小しながらも、海外はアジアを中心に伸長が予想されており業界全体がお先真っ暗という状態ではない。ただ、日本メーカーの多くが海外市場には出遅れているうえ、主力である国内市場では低価格志向脱出の兆しは見えない。

ただ、海外市場進出組も大きな岐路を迎えている。北米・中南米で営業利益率4割を誇っていた東洋水産は、現地の景気減速が打撃に。主要卸先の大手流通が商品管理コスト削減のため商品数を絞り込んでおり、棚から撤去される地域も出始めた。味の素も、飼料部門で中国メーカーなどの競合が激化しそうだ。中国勢は10年秋から増産を予定しており、今後は価格競争に変調があるだろう。
(麻田 真衣=東洋経済オンライン)

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