【産業天気図・空運】国際線の業務渡航回復に加え、羽田国際化も追い風。視界不良脱し「晴れ」へ

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

航空業界は2010年10月から1年間一貫して、「晴れ」の活況が続きそうだ。リーマン・ショック後に打撃の大きかった国際線で高単価の業務渡航が順調に回復している。成田・羽田の首都圏空港で相次ぐ国際線機能拡充も追い風だ。

全日本空輸(ANA)は、主力の国内線が競争激化で旅客単価が小幅下落しているものの、旅客数が大幅増勢で押し上げており、旅客収入は期初想定を上回って推移している。景気減速懸念もあるが、この勢いは10年度後半以降も持続する見通しだ。

経営破綻した日本航空(JAL)から優良顧客が移っているのもプラス材料。今後、一段と路線減便や撤退などリストラを進めるJALに対して競争力が増す可能性は高い。さらに10月末の羽田空港の新滑走路オープンでさらに弾みがつくとみられ、JALと互角だった国内線事業は現在はANAが優勢だ。

国内線は新興航空会社のスカイマークも堅調。大手の半額並み運賃が認知され、価格力で顧客を奪っている。基幹路線では搭乗率9割台に乗せておりほぼ満席状態が続く。大手を脅かす存在にまで成長した。10年度後半には九州中心に就航地域を増やし、路線数は一気に倍増する予定。一段と需要喚起につながる見通しだ。
 
 国際線需要も戻っている。ANAは旅客数が前期比2ケタ増で回復、中でもビジネスマンなど優良顧客中心に需要が増えており、旅客単価も2ケタの伸びを見せている。方面別では欧州が軟調だが、中国やアジア路線は好調。景気持ち直しが早い地域を中心に人の動きが活発化してきた。国際線はインフルエンザや景気後退など前期が相当厳しかったこともあるが、足元では単価・旅客数ともANAの期初想定を大きく上回っている。国際線は国内線に比べて収益底上げにつながる牽引力となっており、勢いは続くだろう。

今後はJALの動向が焦点。JALと管財人の企業再生支援機構は8月末に東京地裁に更生計画を提出、11月末に裁判所から認可を得たい考えだ。年末には支援機構が3500億円を出資。来年3月末には民間金融機関から3000億円を超えるファイナスを得て更生会社から脱する計画。ただ、行方は不透明な面もある。JALの業績回復が秋以降に再び鈍るのであれば、再生シナリオも崩れる。ANAやスカイマークとの公平公正な競争が続けられるかどうかも注目される。
(冨岡 耕=東洋経済オンライン)

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