【産業天気図・建設業】政府予算削減、民需も景気回復鈍化で足踏み。終始「雨」の厳しい環境

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10年10月~11年3月 11年4月~9月

建設業界の景況感は、2010年10月から1年間、「雨」が続く厳しさとなりそうだ。ただ、得意分野で大型案件を獲得した場合、業績が底入れに向かう企業が出てくる「局地的に晴れ」の展開も予想される。

リーマン・ショックから2年が過ぎ、民間の国内建築の発注動向には、反動増の兆しがみられる。たとえば10年7月の新設住宅着工戸数は77.2万戸で、前年同月より3.2万戸増、前月6月よりも2.2万戸増えた。首都・近畿圏の郊外で低価格の戸建て住宅が好調なこと、マンションの新規着工件数が増加に転じていることなどが要因。また耐震・省エネ基準厳格化も需要創出につながりそうだ。

とはいえ、官公庁工事の請負比率が比較的高い企業は引き続き、中央と地方の予算削減の打撃を受けそうだ。国土交通省が8月末に公表した11年度予算の概算要求は前年度比0.5%減にとどまるが、それでも「過去の受注競争の影響で、新規発注の予定価格は低く抑えられている。入札参加企業は増える一方で、いかに失注を減らして受注精度を高めるかが、採算を向上させる肝になっている」(中堅ゼネコン)。

自由競争の民間工事も、足元の景気回復の鈍化や円高進行で足踏みが続くもようで、新規の国内大型案件をめぐる受注競争は熾烈を極めそうだ。「大型の好採算工事をいかに獲るかで収益は全然違ってくる。マンションであれば駅前再開発と連動した案件でなければ採算ラインに乗らない」(大手ゼネコン)。これも大手や準大手上位に共通する受注姿勢である。

大成建設、大林組、清水建設、鹿島の大手4社に関しては、足元の受注目標を達成するよりも、来期以降の利益改善を着実に達成するために、「量より質」の採算重視の姿勢をより鮮明にしている。海外の案件に関しても同様だ。工事着工後の契約トラブルや資材高などリスク要因を考えると、慎重にならざるを得ず、当面はASEAN(東南アジア諸国連合)の都心部での高層ビルやコンドミニアム、郊外での日系工場の受注を中心に手堅く手持ち工事を増やしていく考えだ。
(古庄 英一=東洋経済オンライン) 

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