きみ、勝てば官軍という商売はあかんよ

結果だけが商売、と考えたら結局は失敗する

昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。(編集部)

 

「経営は、絶対に勝たないとダメなんだ。なんだかんだと言っても、結局は、利益なんですよ。いかなる方法であっても、結果を出すという、そういう考えがないとダメ。」と言い出したのは、松下幸之助の姻戚関係にあるS専務(当時)である。

経営は結果が全てなのか?

それを聞いた私は、「それは、おかしいですよ。確かに、経営は、利益をあげなければならないと思いますが、だからと言って、なんでもやっていい、いかなる方法でもいいというのは、言い過ぎではないですか」と言った。

S専務は、私を嘲笑うような表情で「君は、経営者でないから、経営の厳しさを知らない。経営は死にもの狂いなんだ。だから、ときには手段を選ばず、ときには、法に触れない、ギリギリのこともやらなければならないんだよ。そういうことをやっても、とにかく、売り上げを伸ばし、利益を確保する、そういう結果を出す経営をすることをしないと、会社は成り立っていかないんだ」と声を大きくして言う。

私は納得いかなかった。「そんなことまでして、売り上げを伸ばし、利益をあげても、世の中に迷惑をかける、法に触れなくとも、道義的に、人間的に反するようなことをしたら、いけないんじゃないですか。それは、勝てば官軍、ということで、許されないと思います。たとえ、道理に反しても、勝てばいい。結果を出せばいいという専務の考えは、経営者が考えることではないですよ。結果も正しく出すけれど、過程も正しくおこなっていく。それが経営者の心掛けることではないですか」と私も次第に激しい口調になっていく。S専務も一層激高し、「君、経営を知らん者が、無責任に、そんなことを言うべきではない。そうなんだよ。勝てば官軍でいいんだよ。勝てば官軍。経営はそういうもんなんだよ」と続ける。

松下幸之助のベッドの横で、S専務とこのようなやり取りをしていたが、松下はベッドに横になり、聞いているのかいないのか、眠っているのかいないのか、ずっと目をつむったままであった。

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