「俺のフレンチ」も取り入れた、常勝戦略 T型フォード、ドトールも同じ戦略だった!

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このように「俺のフレンチ」は、ちまたでは大きな話題になっているが、実は今から34年前、「俺のフレンチ」とまったく同じ発想で成功した会社が、日本のコーヒー業界にあった。日本最大級のコーヒーチェーンであるドトールである。

半額のコーヒーで4倍集客し、2倍の売り上げ!

今からさかのぼること34年の1980年。喫茶店のコーヒーは1杯300~400円が当たり前。当時の物価を考えると、毎日飲める価格ではない。そんな時代、「おいしい本格派コーヒーを、日本人に毎日飲んでほしい」と考えた人がいた。ドトール創業者の鳥羽博道社長(当時)だ。

かつて「俺のフレンチ」と同じ方式で、業界大手に上り詰めたドトール

鳥羽社長は、1970年代にパリのシャンゼリゼ通りで、出勤途中のビジネスマンが立ち飲みコーヒー店に立ち寄って、サッとコーヒーを飲んでオフィスに向かう姿を見て、「格好いいな。同じような店を日本でも作れないものか」と考えた。

しかし前述のとおり、1970年代当時の日本の喫茶店は高かった。鳥羽社長はこれを何としても変えたいと考えた。

そこで「本格コーヒーを1杯150円で出せば、毎日飲んでもらえる」と考えた。しかりビジネスなので、150円でも収益を上げなければならない。そのためにどうするか? 鳥羽社長は頭をひねった。

鳥羽社長が導き出した答えは、極めてシンプルだ。

「4倍の客に、半額の150円で提供すれば、2倍の売り上げが上がる」

すべてはここが出発点だった。

普通であれば、半額以下でコーヒーを出そうと考えると、店の賃料が安い場所で出店しようと考えがちだ。しかし鳥羽社長は逆の発想をした。4倍の客に来てもらうために、むしろ1号店は土地代が高い原宿駅前に作ることにしたのだ。

次の課題は、従来と同じ人数のスタッフで、4倍の客に対していかにサービスを提供するかだ。「とにかく頑張れ!」とハッパをかけるだけでは、すぐに限界が来るのは明らかだ。

当時の喫茶店はすべて、客席で注文を取り、従業員が席までコーヒーを運び、最後に精算するフルサービスを提供していた。ドトールコーヒーショップはこの常識に挑戦し、カウンターで注文を受けて精算し、その場でコーヒーを出すセルフサービスに切り替えた。今は当たり前になったこのセルフサービス方式を定着させたのだ。

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