【産業天気図・建設機械】新興国インフラ需要に牽引され、業界景況感は後半「晴れ」へ改善

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 また、油圧ショベルメーカーが中国需要を取り込み、海外売り上げ比率が8割を超えているのに対して、クレーンメーカーは最大手のタダノでも5割にとどまる。特に中国市場では、現地の国産メーカーによる据え付け型のクレーンが普及しており、自走式の高機能な日本型機種には市場の関心がまだ薄い。また、トラックの荷台に懸架するクレーンでは、建機ではなくトラックの扱いになるため油圧ショベルに比べて外資には規制がきつい。

クレーンメーカーが油圧ショベルのように中国市場の成長をストレートに取り込むのは難しいかもしれない。クレーンは今期を底にしたV字回復ではなく、国内の買い換え需要とともに緩やかな回復カーブを描くと見るべきだろう。タダノは4~9月期は営業赤字転落が確実、通期でも均衡圏がやっと。加藤製作所もクレーンは大赤字だが、中国向けに油圧ショベルを扱っているためなんとか黒字を維持する可能性がある。

輸出比率が高い建機メーカーにとって、目先の急速な円高進行はどんな影響があるか。大手の油圧ショベルメーカーは、新興国向けを中心に旺盛な需要を背景にした製品の値上げに成功、円高による減益要因を吸収しつつある。しかし、欧州市場や米国市場を中心とするメーカーにとっては、円高の打撃は甚大だ。ミニショベルの老舗、竹内製作所は1ドル90円前後で損益分岐点を割り込んでくるため、この夏に下方修正を行って今期予想の赤字幅が拡大すると発表した。一部メーカーにとって今期の天気は「土砂降り」である。
(山崎 豪敏=東洋経済オンライン)

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