「香港デモ封殺」から透ける、中国政府の焦り 情報操作は無理、格差是正なければ中国はもたない

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学生たちの座り込みデモに対して、香港の警察による鎮圧行為も始まった。香港の警察と言えば映画「ポリス・ストーリー」でジャッキー・チェンが扮する「正義の警官」というイメージだったが、今回の抗争で、さほど人民解放軍と変わりがないことも知った。

それはさておき、このニュースは中国の本土にどう伝わっているのか。今や、中国ではデモは年間10万件とも、20万件ともいわれており、毎週のように各地で起きている。それを国内の治安を維持する武装警察の力で押さえ込んでいるといっても過言ではない。香港の動向が、中国の影響を与えないわけがないのだ。

わかっていた、市場経済政策の副作用

結局のところ、香港のデモは、中国では内容が偏って報道されている。私が中国国内で聞いてみると、「香港の学生デモも、いずれは押さえ込まれるだろう」との見方をする一般人が多い。実際、1989年の天安門事件は、中国政府にとっては、「力によって騒乱を押さえ込み、共産党一党支配を守り、その後の高度経済成長路線につなげた」という成功体験として記憶されているのが実態ではないか。

天安門事件の後、何とか民主勢力をおさえ込んだ政権側は、二つの方針を打ち出したといえる。「愛国主義」と「市場経済政策の徹底」だ。前者では、例えば日本を標的にした抗日戦争の画像を繰り返し流すなど、日本を悪者に仕立てあげ「洗脳教育」を本格化した。若者がたてた「愛国無罪」などのスローガンも、事実上支持した。後者は、1992年の鄧小平の南巡講話とよばれる地方視察と遊説があまりに有名だ。民衆は本来、社会主義とは相いれないはずの市場経済政策を受け入れた。

別の見方をすれば、中国の人民は新たな共産党の政策に懐柔されてしまったわけだが、私がいいたいことは、政府もこの政策によって「貧富の差が拡大し、新たな不平不満が起こる」ことを予見していたはずである、ということだ。

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