マニアもうなるシトロエン新型C4「伝統の味」 伝統+革新「シトロエンらしさ」満載の新境地

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最初にドライブしたディーゼルの車両重量は1380kgと、同じパワートレインを積むベルランゴより200kg以上軽いので、力はかなり余裕がある。吹け上がりもディーゼルとは思えないほど滑らかだ。

エンジン音がほとんど気にならないのは、8速ATが状況に合わせてひんぱんに変速を行い、低回転だけを使って走れることも大きい。それでいて、いつ変速したかわからないほどスムーズでもある。

筆者が試乗したディーゼルモデルのエンジンルーム(筆者撮影)

プラットフォームはプジョー2008、DSオートモビル「DS3クロスバック」などと共通だが、ホイールベースが長いうえに、「C5エアクロス」で定評の「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」が組み込まれている。

これは、ショックアブソーバー内のダンパーシリンダーを2つに増やし、大きな入力でストロークが進んだときに第2シリンダーが働くようにしたものだ。メインのシリンダーは減衰力を低く抑えられるので、きわめてソフトでスムーズな乗り心地を提供できる。

GSやBXなどが装備していたハイドロニューマチック(ハイドロ)は、金属バネとショックアブソーバーの代わりにガスとオイルを使ったもので、ガスがスプリングの役目を担う、いわばエアサスであり、オイルはエンジン駆動のポンプから供給することで車高調節などを行い、ブレーキやステアリングのパワーアシストも担当していた。

それと比べると新型C4の乗り心地は、金属バネを使ったハイドロと呼べる。

「プログレッシブ・ハイドローリック・クッション」の透視図(写真:Groupe PSA Japan)

エアと金属の動きの違いはあるが、それはGSを所有する筆者だからわかったというレベルであって、数年ぶりにシトロエンに接した人は「蘇ったハイドロ」と感じるはずだ。特にうねりを通過後のゆったりしたしぐさが、それっぽい。

そして高速道路では、この乗り心地にシトロエンの伝統でもある抜群の直進安定性に「アクティブクルーズコントロール」や「レーンポジショニングアシスト」をはじめとする先進運転支援システムが加わり、快適を超えて快感と呼びたくなるクルージングを味わわせてくれる。

290万円~、BXに匹敵するヒットになる?

短時間試乗したË-C4は、当然ながらC4以上にスムーズ。発進直後から音もなくスーッと速度を上げていくフィーリングは、やっぱり新鮮だ。

乗り心地は車重の関係で落ち着きが増しているうえに、エンジン音がないおかげで、プログレッシブ・ハイドローリック・クッションの浮世離れした乗り心地がさらに強調されていた。

ガソリン車のベースグレードが290万円、ディーゼル車が345万円、Ë-C4が465万円という価格は、シトロエンならではの世界観にあふれたデザインと走りを体験した今となっては、バーゲンプライスではないかと思った。かつてのBXに匹敵するヒット作になるかもしれないと期待している。

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森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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