再エネに冷や水浴びせる電力会社の契約中断 太陽光発電の買い取りを止めた九州電力

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この点はまさに再エネに対する、国としての姿勢が問われる。欧州では再エネの優先給電が欧州連合(EU)指令で義務づけられ、再エネの出力を抑制する前に、火力や原子力を抑制しなければならない。結果としてベースロード電源が消滅に向かっているともいわれる。

もちろん、電力系統の安定が大前提ではあるが、日本はまだFIT法によっても、再エネの優先義務が徹底されていない。電力会社にとっては「厄介な代物」との意識が根強く、受け入れ対策も後手後手の印象が強い。

「系統接続に厳しさがあり、受け入れ容量拡大が必要なことは、FIT開始前からわかっていたはず。揚水発電の設備利用率は低く、連系線を通じた他地域への供給もあまり行われていない。本当に受け入れ枠はいっぱいなのか」と、高橋洋・富士通総研主任研究員は疑問を投げる。

日本の全発電量に占める再エネの比率は、欧米に比べて低く、普及の本格化はこれから。FIT導入で、住宅用の太陽光発電の導入コストは急速に低下し、2016年には家庭向け電気料金より安くなる可能性も指摘される。低コストでエネルギー自給率を高めるためにも、電力会社が先進国の需給調整ノウハウを見習い、そして政府も再エネの推進姿勢をより明確にする必要があろう。

「週刊東洋経済」2014年10月11日号<10月6日発売>掲載の「核心リポート03」を転載)

中村 稔 東洋経済 編集委員
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