複雑化する「住宅設備」快適になるはずが不便さも 住まいはユーザーフレンドリーになっているか

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ところで、新築住宅に限らず当たり前に存在するものの使い方を巡り、困った事態に陥った家族がいる。例えばトイレの手すり。Bさんは約15年前に建て替えられた実家で、家族が苦労した経験があるという。

「建て替えてしばらく経ってから、父(故人)は重病のため足腰が弱くなり、トイレに入ると便座から立ち上がることが難しくなった。用を足すたびに母を呼ばなくてはならず、父母それぞれがストレスを感じていた」

写真は高齢者向け住宅に設置されたトイレの様子。トイレの手すりなどへの細かい配慮を行った住宅なら、自宅介護もしやすく高齢者施設に入らなくてもすむ可能性が高まる(筆者撮影)

あるタイミングで住宅事業者のアフターサービス担当者に手すりの使い方いついて聞く機会があり、その結果、立ち上がりを容易にする手すりの持ち方を知ることができ、状況がずいぶん改善されたのだという。

改めて確認すると、その手すりの形状はBさんの父親のように立ち上がりに難のある人向けに開発された優れモノだったそう。ただ、どんなに優れたものであっても、その使い方が伝わっていなければ住まい手はその恩恵を十分に得られない。

換気システムに大量のホコリ

もう1つ、築7年の戸建て住宅に暮らすCさんが体験した事例について紹介する。それは24時間換気システムの室内側にある吸気口に関するもので、一昨年の年末、リビングにある吸気口を掃除したところ、大量のホコリが溜まっていたのだという。

24時間換気システムの室内側吸気口のイメージ。高齢者世帯では自分で掃除するのは無理がありそうだ(筆者撮影。写真はわかりやすいようにカバーを外している)

「吸気口は天井にあるため普段の生活の中ではほとんど意識しない場所。7年間ほったらかしにしていたわけだからホコリまみれになるの当然だが、その量に家族みんなで驚いた」とCさん。

「コロナ禍になって室内の空気に敏感になっていたから気付けたのかも」ということだが、吸気口がこれほど汚れる場所であることを最初から知っていれば、よりキレイな空気の中で生活できていたわけだ。

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