日経平均は、1万5000円を維持できるか 不吉なヒンデンブルグ・オーメン示現後の株式市場

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さて、今回はNISA(少額投資非課税制度)の話もさせていただきたい。いま証券各社では、個人投資家に向けてNISA口座100万円枠未消化分の執行を勧める営業活動が佳境を迎えている。

現在、日本経済は、デフレからは脱却しつつある。だが、経済の回復に対して賃金の増加率は低く、消費者態度指数も低迷している。消費税増税後の反動が緩やかだと言われているが、これは駆け込み需要が盛り上がらなかったことの証左でもあり、アベノミクスに淡い期待はしても、信頼はしていない消費者のマインドを表している。

不安の最大要因は、人口減少による社会システムの崩壊懸念だ。すでに政府は2050年でも1億人程度の人口を維持できるとの予測を発表しているが、これは逆に言えば、今から2700万人の人口が減るということである。つまり、30万人弱の中堅都市が、100個も消滅するという、恐ろしいイメージだ。

NISA改革を推進、投資家に支持される「国家戦略」に

確かに政府関係者の話を聞いていると「働きたい人は75歳まで働ける社会基盤を作ろう」という、一見前向きに見えるような議論もある。だが、普通に考えれば、これは最終的には年金支給開始年齢を75歳程度まで引き上げると言うことである。国民1人1人がしっかりとした危機意識を持って自己防衛をしなければならないところに来ている。

政治の世界を見ても、少子化担当大臣だけは何人も変わったが、変化の実感はほとんどない。企業の体制も全くといっていいほど進んでいない。社会保障システムが脆弱になる中で、国民は今後何十年かを生きて行かなければならないという事実だけが継続している。

そんな中で、NISAは政権の人気とりとか、証券界の都合か、といったことではなく、この非課税枠が社会保障システムを補完する重要な政策・国家戦略の一つであるという強い認識が必要ではないか。

さすがに、国もそれを踏まえてNISA改革に大きく動く構えだ。今後は、年100万円の枠の拡大、制度自体の恒久化、使いやすいように枠内での売買の自由化や損益通算もできるようになるかもしれない。親や祖父母が子供や孫の名義で出来る「ジュニアNISA」制度発足の話まで出てきた。

金融庁の発表によると、NISA口座数は6月末で727万口座、つまり枠は7兆2700億円あるのだが、実際の買い付け額は1兆5631億円、未消化枠は5兆7000億円に上るという。証券・金融各社は、NISAが社会保障システムを補完する国民の自己防衛システムだということを理解し、高い理念をもって年末まで営業活動に邁進してほしいものだ。
 

平野 憲一 ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト

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ひらの けんいち

日本証券アナリスト協会検定会員。株一筋約45年。歴史を今に生かすことのできる「貴重なストラテジスト」として、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌への出演や寄稿記事多数。的確な予想で知られ、個人投資家の間には熱烈な「平野ファン」がいることでも有名。1970年に立花証券入社以来、個人営業、法人営業、株ディーラーを経て、2000年情報企画部長マーケットアナリストとして、投資家や各メディアに対してマーケット情報発信をスタート。2006年執行役員、2012年顧問就任。2014年に個人事務所ケイ・アセット代表。独立後も、丁寧でわかりやすい解説を目指す。

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