国立女子大で相次ぎ「工学」分野の学部新設のなぜ 今春に奈良女子で、24年度にお茶の水が設置へ

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国立の女子大学で相次いで工学分野の学部設置が計画されています。いったいなぜでしょうか? 写真は奈良女子大の授業風景(写真:奈良女子大)
ICT革命の中、工学分野でも女性など多様な視点が欠かせないものになっているが、日本の工学領域で活躍する女性の割合は世界的にも低いのが現状だ。そんな中、今年春には奈良女子大が工学部を開設。2024年度にはお茶の水女子大が共創工学部の設置を計画。東西2つある国立の女子大が相次いで学部を新設する目的は何なのか。女性にとって魅力ある工学とはどのようなものか取材した。

今、企業が切に求める女性エンジニア

2022年4月に奈良女子大で女子大として初めて工学部が誕生する。これまであった文学部、理学部、生活環境学部の3学部に加え、生体医工学、情報、人間環境、材料工学などの分野を学ぶことができる工学部だ。

世界的にも日本の女性の理工系人材の育成が遅れていることが浮き彫りになっている。文部科学省の学校基本調査によると、4年制の大学で工学部の女性比率は約15%にとどまる。OECD調査でも、大学など高等教育機関の入学者のうち、STEM分野の工学における日本の女性比率は比較可能な加盟国36カ国中で最低だ。

奈良女子大は工学部開設にあたり、キャッチコピーを「私、工学 世界は変わる」と掲げた。工学部長に就任予定の藤田盟児教授はこう話す。

「エンジニアとして女性が活躍するようになれば、街の姿をはじめ、すべてのものを変える大きな可能性があります。スマートシティを進めていくにもロボット技術にしても、女性の視点は欠かせません。もし社会により良いサービスを提供することに興味があれば、ぜひ臆せずチャレンジしてほしい分野です」

男性中心の開発から女性の視点も入れることで、新たなイノベーションが生まれる可能性もある。企業からも女性エンジニアを望む声が上がっているという。

一方、お茶の水女子大は、2024年度に共創工学部(仮称)を設置構想中だ。これまであった文教育学部、理学部、生活科学部に加え、「人間環境工学(仮称)」と「文化情報工学(仮称)」の2学科を有する工学部となる。共創の言葉には「社会との共創」「文系理系の垣根を超えた共創」「工学の分野間での共創」という意味を込めた。既存の3学部のハブ的な役割も担う。

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