産業天気図(輸送用機器−自動車) 排ガス特需でトラック順調、乗用車は下方修正懸念も

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2003年の自動車業界は、4月~9月の軽自動車を含む乗用車販売が僅かに前年を割り込み、相変わらず需要は冴えない。一方、商用車ではトラックの排ガス規制絡みで前年を上回っており、日野自動車やいすゞ自動車、日産ディーゼルなどのトラックメーカーはどこも大幅な台数増を確保している。今年の後半も「商用車好調、乗用車頭打ち」のトレンドは大きく変わりそうもない。
 乗用車需要が横ばいのなかで相変わらず強さを見せつけているのがトヨタ自動車。第1四半期(4月~6月)には四半期ベースで過去最高の国内シェアを達成した。9月から発売を始めたハイブリッドカーの新型「プリウス」は9月末時点で、月間販売目標3000台に対して、1万7500台の受注を獲得するなど、好調な滑り出しをみせている。
 順調なトヨタに対し、ホンダの国内販売は依然として2桁割れが続く。第1四半期には国内販売を前期比4%割れの81.5万台へ下方修正したが、中間期に再び販売台数の下方修正に踏み切る可能性が高い。計画を上回る好調を維持していたドル箱の米国販売も、9月の販売はほぼ横ばいと、やや減速のきらいもある。9月中旬以降の急激な円高(ホンダの為替想定は1ドル117円)も懸念材料となる。
 大手自動車メーカーのなかで、期初の為替想定を1ドル120円ともっとも円安にみていたのが日産自動車。第1四半期では売上げしか公表しておらず、中間期には為替見通しを変えざるを得ないだろう。国内販売は上半期で1%弱の増加。通期販売計画は6%増を見込んでいるものの、目立った新車発表もないだけに目標達成は厳しいとみられる。シェア拡大に力を入れる北米市場は新工場で生産しているミニバンの「クエスト」が好調。尻上がりに販売台数を増やしている。しかし、通期で前期比17%の販売拡大についてはハードルが高いと東洋経済ではみている。ホンダと同様に円高と国内販売の伸び悩みから、中間決算発表で通期見通しを若干引き下げる可能性は否定できない。
 また、第1四半期で早々と業績の下方修正を発表し、マーケットから大量の売りを浴びたのが三菱自動車。大幅な修正の元凶は米国販売で、販促費の増加と販売金融部門の追加引当が致命傷となった。通期では資材費削減の進捗や10月に北米で発売する新型「ギャラン」の貢献により、通期では営業益600億円、最終利益100億円を確保するとしている。ただ、最終黒字のシナリオは資産売却(有価証券など)を前提としており、実質的には赤字転落を意味する。国内、海外販売ともに復活の兆しは見えず、更なる下方修正の可能性もある。新型「レガシィ」が好調な滑り出しをみせた富士重工業も、新型車を除く既存車の販売に勢いがみられない。軽自動車の2桁割れも予想外のマイナス材料。北米販売は2桁増を見込んでいたが、乗用車販売が想定を下回っているうえ、販売促進費用も予定以上に使っているとみられ、三菱自動車と同様に下方修正懸念がある。
【井下健悟、佐々木紀彦記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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