資源開発では地政学リスクの管理が重要だ 石油メジャー首脳が語る、エネルギー市場の今

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そして、ロシアにおける3つめの主要資産がヤマルLNGだ。ヤマル半島でLNG生産計画を進めており、現在、基地を建設中にある。当社は20%の権益を持ち、中国のCNPC(中国石油天然気集団)が20%、ノバテクが60%を保有する。総投資額270億ドルという巨大計画であり、すでに60億ドルを投資済みだ。

今のところ、ロシアへの経済制裁によって大きな影響は受けていない。ヤマルLNG事業は継続中であり、今後も続ける方針だ。ただ、米国の制裁によって当初の資金調達計画が影響を受けており、現状、米ドルでの調達が禁止されている。そのため、中国やロシア、欧州の銀行からの調達を模索している。

われわれはグローバルな世界にいる。どの国も世界から孤立しては生きていけない。技術は今や高度に専門化しており、ほかの国の技術を必要としている。エネルギー業界もグローバル化しており、地政学リスクから大きな影響を受けやすい。

そのため、ますます地政学リスクへ対処することに多くの時間と労力をかけている。私が毎朝、目を覚まして最初にやることは、われわれのグローバルなスタッフがリスクにさらされていないかを情報で確かめることだ。社員のセキュリティ確保が、企業経営者の役割としてより重要になっている。

かつてはわれわれ経営者がほとんどの時間を費やしたのは、ビジネスの決断だった。それが今では、地政学リスクをどう管理するかに重点が移っている。世界各地の政治的な問題がどうなるかはわれわれの仕事ではない。重要なのは、潜在的なリスクにどう対応するかを判断し、それを(ステイクホルダーに)説明することだ。

環境に配慮せずビジネスはできない

――リスクという意味では、現在、シェールガス開発の環境への影響が懸念され、各国政府が規制強化の動きを強めつつある。開発業者にとっては規制強化がリスクとなる。

規制強化はリスクとは考えていない。われわれは環境を守らなければならない。それはわれわれのビジネスの一部だ。環境に配慮せずにどんなビジネスもできない。もちろん、コストはそれ相応にかかる。ビジネスの目標は収益の向上だが、それは安全で社会やコミュニティに受け入れられるものでなければならない。

当社も二酸化炭素排出量の削減に責任を持ち、実際に進歩を達成してきた。石炭に比べ二酸化炭素排出量の少ないLNGの開発をより積極的に進めてきた。シェールガスにしても、在来型ガスにしても、環境にやさしい形で開発を行う責任を今後も果たしていく。

(撮影:尾形文繁)

※ 詳しくは「週刊東洋経済」2014年10月18日号<10月14日発売>の巻頭特集「地政学リスク高まる!」をご覧ください

中村 稔 東洋経済 編集委員
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