(第32回)米国の国際収支でのサービス輸出の貢献

✎ 1〜 ✎ 31 ✎ 32 ✎ 33 ✎ 最新
拡大
縮小


金融やIT関連の成長が著しい

では、アメリカはいかなる種類のサービスを輸出しているのだろうか?

サービス貿易の古典的な姿は、輸送関連サービスや特許権使用料にかかわるものである。しかし、いまのアメリカのサービス収支で最大の項目は、これらではなく、「その他民間サービス」と分類されているものだ。これが具体的にいかなるサービスであるかは入手できる統計では明確に示されていないのだが、金融関連サービスや、前回述べたビジネス支援サービス(特にIT関連のもの)が大半を占めていると考えられる。

09年には、サービス輸出1384億ドルのうち、「その他民間サービス」の輸出が694億ドルと過半を占めている。時系列で見ても、「その他民間サービス」の比重は、ほかのサービスに比べても、また財輸出に比べても、顕著な上昇を示している。図には、サービス貿易収支尻総額に対する輸送関連、特許関連、そして「その他民間サービス」収支の比重の推移を示した。

90年代の初めには、この3つの項目の比重にはあまり大きな差はなかった。ところが、その後、輸送関連サービス収支の黒字は縮小し、01年からは赤字になった。その半面で「その他民間サービス」収支の黒字の比重は、特に90年代の後半以降顕著に上昇し、04年には9割近くになったのである。

03年以降は三つの項目の比重は均等化傾向を示している。これは、輸送関連サービスの赤字が縮小したことによるのであろう。ただし、08年を除けば「その他民間サービス」の比重が最大であることに変わりはない(09年における比重は50・1%)。

「その他民間サービス」には、インターネット関連のサービスも多く含まれていると考えられる。


関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT