樫野孝人・神戸リメイクプロジェクト代表(Part3)--いいプロデューサーは負けない、負け試合でも引き分けに持っていく

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--話題となった映画の「バトル・ロワイヤル」は成功ですか?

成功です。5000万円出資して4~5倍の回収はあったかと思います。時代性、原作の強さ、キャスティングの良さ、深作欣二監督の遺作になるのでは、と言われていた背景、国会でも暴力描写が問題になるくらいのニュース性など、いろんなヒットの要素がありました。

すべて計算内ではなくタイミングやラッキーな面もありますが、いいプロデューサーは負けません。負け試合でも引き分けに持っていきます。僕もけっこう手堅い。選挙は負けましたが(笑)、負ける勝負はあまりしません。

--大負けしないコツは何でしょう。

シミュレーションする力ではないでしょうか。あらゆる最悪な事態を想定し、準備することです。

たとえば、福岡ドームで開催したサーカスの「アレグリア」は、当初から失敗するだろうと言われていて、そもそも呼ぶことさえ難しかった興行でした。本来ならチケットは7割以上売れないと回収できないのですが、4割売れれば回収できるよう、ある企業にスポンサーとしてついてもらったんです。さらに4割のうちの2割は旅行会社の団体客に前もって売っておきました。基本的なことですが、こういう考え方が大負けしないコツではないでしょうか。

--劇団四季の浅利慶太さんが同じことをおっしゃられていますね。四季の座席の入り方も8割入れば、事務方も含めて採算が取れる。その8割の座席も、団体客が3割、会員が4割、残り3割をフリーの客という構成だとベストらしいです。リスクヘッジは大切ですね。

(撮影:今井康一)

かしの・たかひと
神戸市出身。(株)リクルート入社。人事部門を経て、キャンパスマガジン編集長、アートスペース館長、学生総研所長を歴任。1993年、福岡ドームのコンサルティングチームに参加し、マイケル・ジャクソンやマドンナなどのコンサートやシルク・ド・ソレイユ福岡公演などをプロデュース。その後、(株)メディアファクトリーにて映画制作事業を立ち上げ、「バトル・ロワイヤル」などの製作に関わる。 2000年、株式会社アイ・エム・ジェイの代表取締役社長に就任、01年にはナスダック・ジャパンに株式上場を果たす。 連結グループ16社、売上高186億円、従業員数800名の国内最大手のWEBサイト制作企業に成長させる。 09年(株)IMJを退任し、神戸市長選に立候補。15万6178票を獲得するも現職の矢田立郎神戸市長に惜敗。現在、「NANA」「ゼロの焦点」などを制作したIMJエンタテインメント取締役会長、(株)オウケイウェイヴ、(株)コンテンツ、(株)ネットオンの社外取締役のほか、カナリア書房のアドバイザリーボードも務める。 神戸リメイクプロジェクト代表。神戸ひとマガジン「裕ちゃんを探せ!」編集長。

■CEOへの道は、エグゼクティブ向けの人材会社・経営者JP主催のセミナー「トークライブ・経営者の条件」との連動企画です。
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