スノボ五輪メダリストが明かす「卵子凍結」の理由 「出産した選手へのサポートがもっと必要だ」

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とはいえ、課題が全てなくなったわけではない。今は、妊娠や出産と向き合うための猶予が与えられただけ。竹内さん自身、タイムリミットを永遠に伸ばせるわけではないことを理解している。

「今、私は妊娠や出産を完全に先送りしている状態。婦人科の先生にも言われたのですが、先送りし過ぎて、40代~50代の高齢出産になると、自分の体にもかなり負担がかかってしまうとのこと。

今は、『すぐ産まないと』という焦りからは解放されましたが、いつか自分でタイムリミットを決める必要があるのも分かっています」

「本当に子ども欲しい?」改めて自問自答

卵子凍結を行ってから約1年間。競技への復帰も果たした今、「本当に子どもが欲しいのか」ということを改めて自問自答していると竹内さんは打ち明ける。

「卵子凍結を行ったことで、一瞬ですが、時間が止まった空間にいるような感覚になりました。そこで、改めて『自分は本当に子どもが欲しいのだろうか?』と考えてみたんです。

そこで気づいたのは、私はただ、タイムリミットが迫っていたから焦っていたし、『早く産まなきゃ』と思っていただけだったんじゃないかということ。

もしそれで急いで妊娠して出産したとしても、自分も生まれてくる子どもも幸せになれないのではないだろうか……。

そう考えたとき、『焦るから妊娠する』というのは、私の生き方とは違うのではないかと思うようになりました」

(写真:赤松洋太)

北京五輪まで残り数カ月(2021年11月時点)。次の大舞台が迫る今、竹内さんは「今は競技が一番」と、正直な思いを聞かせてくれた。競技と妊娠・出産を天秤にかけたのではなく、競技への気持ちが一番にあったからこそ卵子凍結は必要な選択だった。

ただ、2022年の北京五輪で競技をやり切り、完全燃焼したと満足すれば、その考えはまた変化するかもしれない。

次ページまずは目の前に競技に全力を尽くしたい
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