BMWが"ファミリーカー"をつくったワケ 新型「2シリーズ アクティブツアラー」を発表

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車内空間はゆったり。頭上も足元も余裕を持った設計

一般的な立体駐車場にも問題なく入るというコンパクトな見た目とは裏腹に、車内に乗り込むとその広さに驚く。頭上にしても足元にしても、余裕を持った設計だ。後部座席は前後に動かしたり、倒したりしやすく、通常470リットルの積載量は1500リットルまで拡げられる。荷物が多くなる家族旅行やアウトドアに適しているといえそうだ。

車内空間を確保するために採用されたのが、FFの構造だ。冒頭に述べたとおり、今回アクティブツアラーはBMWにとって初めてのFF車。ドイツ本社で開発責任者を務めたニルス・ボルヒャーズ氏は「コンパクトカーの大きさで最大限の車内空間を確保するには、FFの構造がベストだった」と説明する。FR車であれば、車の前方に置かれたエンジンから後輪に駆動を伝えるプロペラシャフトが必要だが、FF車にはない。これにより、FF車のほうが車内空間を広く取れるのだ。

初めてのFF車だが、BMWらしい走りを実現

ただFR車のみを手掛けてきたBMWにとって、一から開発するのには時間もコストもかかる。そこで活用したのが、傘下にある小型大衆車ブランド「MINI(ミニ)」が持つ技術だった。1950年代に英国で生まれたミニは“元祖FF車”ともいわれる。

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家族旅行やアウトドアに適したつくり

今年初めにフルモデルチェンジした新型ミニと、このアクティブツアラーは、共通のFF用アーキテクチャー(基本構造)を用いている。

エンジンやアクスルなど共通のモジュールを持つ基本構造があり、その長さ、高さ、幅を調整してBMWとミニそれぞれのブランドに適用しているという。

とはいえ、両ブランドではそもそものコンセプトがまったく違う。ボルヒャーズ氏は「ミュンヘン本社での開発のルールとして、“どんな形状や駆動方式でも、BMWらしい走りを実現しなければならない”というものがある。サスペンションやシャシーは今回のために新たに開発した」と、ブランドイメージの維持に努めたことを力説する。

BMWとミニを合わせたモデル数は14年現在で32と、この10年で倍増した。「多様化する顧客のライフスタイルに合わせるべく、イノベーションを起こす。これが、BMWの更なる成功に向けたカギだ」とクロンシュナーブル社長は話す。まったく新しいフィールドに踏み込んだ同社の戦略は、吉と出るか、凶と出るか。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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