新車補助金“失効”でトヨタ自動車に新たな危機

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最大の注目はトヨタ自動車の今後だ。国内最大手だけに補助金の反動減は大きく、10月国内生産は9月に比べ約2割減少するとみられる。下期の目玉は「ヴィッツ」のフルモデルチェンジだが、同じ排気量1リットル超クラスでは日産自動車「マーチ」が、タイからの逆輸入や1リットル26キロメートルの低燃費で評判。ホンダも「フィット」のハイブリッド版を出す。ヴィッツは厳しい闘いを強いられる。

それだけではない。補助金切れの一方、エコカー減税が12年3月まで続くことが、「トヨタに“誤算”を生む」(業界関係者)というのだ。

燃費では金額に差がなかった補助金と違い、エコカー減税ではハイブリッド車は100%減税となり、購入時には約14万円お得となる。「結果的にプリウスのお得感が際立ち、人気がさらに集中。レクサスやクラウンの販売が鈍り、トヨタの収益構造が急激に悪化するおそれがある」とこの関係者は指摘する。

減産長期化に粗利の悪化が重なれば、回復の腰など簡単に折れてしまう。トヨタにとって、日本経済にとっても、怖いシナリオである。

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(撮影:風間仁一郎 =週刊東洋経済2010年9月18日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
高橋 由里 東洋経済 記者

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たかはし ゆり / Yuri Takahashi

早稲田大学政治経済学部卒業後、東洋経済新報社に入社。自動車、航空、医薬品業界などを担当しながら、主に『週刊東洋経済』編集部でさまざまなテーマの特集を作ってきた。2014年~2016年まで『週刊東洋経済』編集長。現在は出版局で書籍の編集を行っている。

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