リクルートは"自らの限界"を超えられるか? 迫る「破壊的競合」を前に、隠れた”巨人”は…

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一方で大規模な営業網を必要としない、ソーシャルメディア、口コミ(CGM)、キュレーションなど、ユーザー主体のネットメディアがここにきて急成長している。これらサービスは、低価格、もしくは無料のものが多い。これらユーザー主体のネットメディアが、リクルートの既存事業を破壊する可能性は十分にある。

リボン図の限界、国内マーケットが残っていない!

もうひとつ課題がある。“リボン図におけるマッチング”の限界がそれ。リクルートは、2000年代以降、リクナビ、ゼクシィ、SUUMOなどに匹敵するほどのインパクトのある新しいメディアを生み出せていない。リボン図が成り立つ国内マーケットが限られてきたからだ。

リクルートは、かつて新聞広告が席巻していた求人や住宅などの市場を次々と奪い、成長し続けてきた。就職、結婚、住宅購入といった消費者のライフイベント、旅行、飲食、美容などの消費生活を演出してきた。日本の文化そのものを牽引してきたとも言える。

近年は、医療分野、高齢者、介護市場など、新しい領域にも挑戦してきているものの、大きな事業にはなっていない。リクルートは、社内の新規事業の創出には積極的で、新しい挑戦は歓迎される。が一方、赤字事業の継続基準は厳しく、次々と早期撤退を余儀なくされている。

医療や介護、葬儀などシニア向けのビジネスは、リクルートの新規事業提案制度「New RING(ニューリング)」でも、毎年のように何十件と若手社員からアイデアが出るという。確かに需要はある領域だが、リボン図のマーケットを作ることはたやすいことではない。

たとえば、病院、介護施設のケースで考えてみよう。一般の人から見ると「どの医者がいいのか知りたい」という欲求は確かにある。だが、それに対して集客のコストまでかけられる病院は多くない。全国の介護施設にしても、介護職の人手不足に苦労しているが、予算の少ない介護施設が、求人のために多くの費用をかけられるはずもない。

「カスタマーとクライアントのリボン図のバランスがあまりに不均衡すぎるとうまくいかない。ただ、ITを駆使することで、マッチングのコストを下げる挑戦もしている。集客費を安くできれば、病院や介護施設の問題も解決できるかもしれない」(今村氏)。

リボン図を自ら破壊する!

続々と新興企業が現れ、マッチングの限界もみえる。しかし、リクルートに手をこまぬいている時間はない。

「自分たちの中で、自分たちの競合を作る。リクルートの将来を考えると、自分たちの中から敵を作っていくような手を打つほうがむしろいい」(今村氏)。

つまり、リクルートの既存事業の競合になるような新規事業を社内で開発し、生み出そうという戦略だ。海外投資でも同様。「リクルートの既存事業にとって脅威になりそうな海外企業には、むしろ先に声をかけ、仲間に引き入れる」と今村氏は話す。

なんとリクルートは、リボン図を自ら破壊するイノベーションを生み出そうとしている。将来的に、リクナビ、ゼクシィを壊しかねないものを、自分たち自身でも作りだすということだ。

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