ヤフー小澤流は、「渋いギタリスト」を目指す 小澤隆生×瀧本哲史 対談(下)

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瀧本:ヤフーはメディア業で広告があったわけですが、今はショッピングも頑張ろう、となっている。アスクルで物流もやっている。収益性が落ちるかもしれないけど、ヤフーの規模であれば、やっていけると踏んでいるわけですね。ある意味、今のヤフーは、小澤さんの一番好きなビジネスの方向に舵を切っているのではないですか。

小澤隆生(おざわたかお)
早稲田大学卒業後、CSK入社。1999年にビズシークを創業。2年後に楽天に売却。ビズシークの吸収合併により楽天に入社し、役員としてオークションを担当する。その後、楽天イーグルス立ち上げ担当として楽天野球団取締役事業本部長に。2006年に楽天を退社し小澤総合研究所を設立(現任)、ベンチャーへの投資やコンサルティング業務を行う。2011年に設立したクロコスを2012 年にヤフーに売却し、グループの一員に。 2013年7月、ヤフー執行役員ショッピングカンパニー長に就任。YJキャピタルの設立にも携わり、2014年4月に代表取締役就任。個人投資家としてnanapi、 Appgrooves、カマド、スターフェスティバル、クラウドワークス、キラメックス、Crocos、ケンオクヤマデザイン、Netageほか多数の投資、創業を行っている。

小澤:一定のゾーンに関しては、メディアよりもさらに突っ込んだ事業展開をするべきであるというのが私の主張です。トラフィックを回してなんぼだ、というのがこれまでやってきたことなんですが、そのトラフィック自体が、スマホ、タブレットへの移行によって怪しくなってきた。食べログとかクックパッドみたいなコンテンツ自体を持っていれば、ツールが変わっても強い。しかしヤフーはコンテンツを持っていない。

僕としては、ゆくゆくは商品粗利の部分もしっかり押さえながら、トランザクションベースのものをやったほうがいいと思っている。なので、トランザクションで少なくともビジネスが成立しているいくつかのモデルに関しては、我々の独自の在庫というのは持っておいたほうがよかろうと。今PCで強いうちにそのトラフィックを利用して、こちらの蓄えを十二分につくっておき、ツールが切り替わった時でも、ヤフーが素晴らしいからヤフーを使い続けるように持っていく。それがすごく重要。恐らくニュースアプリなどとは違って、極めてユニークなものになるはずなので、やる意味もあると思うんです。

買収に対するハードルは下がっている

瀧本:今は10年前と比較しても、企業をバンバン買収していける世の中ですよね。買収をしてサービスを強化する、ということについてはどう考えていますか。

小澤:インターネットビジネスの出現によって、買収に対するハードルは心理的にもテクニカル的にもグッと下がっていますね。以前は、救済か敵対かの二者択一で、売ることはギブアップということだった。それはだいぶ世の中的には薄まってきて、起業家としての成功の一つのパターンにはなりつつあるとは思います。
これはいいことだと思います。個人的な経験で言うと、会社を売却し、新しい環境下において、自分がやりたいことの延長線上でその会社と一緒にやることもできる。それまでは想像もできなかったような大きなこともできる。これは最高にありがたいですね。

瀧本:そうですよね。小澤さんはバイアウトによってキャリアが広がっていった。いろいろな組織の中でうまくやっていける、というのは普通ではないです。大きな組織内で人を動かしていくために、とくに気を付けていること、工夫していることはありますか。

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