進む円高、長期戦略を欠く政府、狂騒に翻弄された日銀

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 また、今回の追加緩和の決定は全員一致ではなく、須田美矢子審議委員が、(市場機能の低下など)副作用が強く効果は薄い、として反対している。

為替介入を求める声もあるが、大規模な単独介入はIMF協定違反のうえ、欧米がバランスシート調整を進めている以上、効果は薄い。2000年代前半の大規模なドル買い円売り介入が、米国発のバブルの温床となったことも忘れてはならない。

今回、0・1%の固定金利の共通担保資金供給オペレーションについて、3カ月物に加え6カ月物の導入、20兆円から30兆円への量の拡大を行ったことは、より長めの金利の低下を促す効果はある。だが資金需要は乏しくて貸し出しには回らず、国債が積み増しされるだけだ。

当面、円高が一定程度進むことは避けられない。重要なのは、円高をメリットに変えていく工夫や、中長期での構造転換へ向けた戦略だ。

(大崎明子 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2010年9月11日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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