「スポ根」アニメから抜け出せない日本 【最終回】 スポーツは「遊び」なのか?

✎ 1〜 ✎ 7 ✎ 8 ✎ 9 ✎ 10
拡大
縮小

今日、根性論と一線を画すトレーニング方法や生涯スポーツを追求する動きも出てきているが、スポ根アニメで育った指導者もまだまだ多い。「スポーツは遊び」という定義は頭でわかっても、しっくりこない人も多いのではないだろうか。

なぜドイツではスポーツが「余暇」なのか

「スポーツとは遊び」への筆者の違和感が氷解したのが、ドイツのスポーツクラブだった。第3回「ドイツの学校には部活がない?」でも述べたように、スポーツクラブはNPOのような組織で、老若男女が日常的にスポーツをする場だ。しごきや体罰とは無縁で、コースによっては「ゆるゆる」にすら見える。また第6回「勝利だけにあらず。これがドイツの秘密」でも述べたように、ドイツも戦後は競技中心だったが、1960年代から健康や余暇、社交といった「ブライテンスポーツ(幅広いスポーツ)」を推進してきた。勝利や記録だけにこだわる狭量なスポーツ像と決別したのだ。

 ドイツも戦後は経済成長期を体験しているが、むしろ余暇時間を増やしていった。そこへ職住近接が重なる。さらに、なぜきっぱり仕事とプライベートを切り分けやすいのかを考えると、制度以外に時間感覚も影響しているのではないか。ドイツの時間感覚は一直線で、タスクをひとつずつ片付けていく傾向が強い。職場では、ほとんど休息をとらずに仕事に集中、そして「就業時間」という大きなタスクが終わると「プライベートの時間」に切り替える。かたや、日本の職場を見ると、複数の仕事を並行にこなし、缶コーヒー片手に「だましだましの休息」。結果的に長時間職場にいる。

 このように仕事とプライベートの時間を比較的切り分けやすい上に「幅広いスポーツ」ができる場があるのがドイツだ。「遊び」「気晴らし」としてのスポーツが実現しやすい。余暇に関する複数の統計を見ても、決して上位ではないが、スポーツがひとつの余暇として成り立っている。

次ページ「仕立てあげる」と「引き上げる」
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT