鉄道のDNAが生きるバス「ひたちBRT」 東京も導入?渋滞無縁の「未来の街バス」とは

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そうした中、今注目を集めているBRTのひとつが、茨城県日立市の「ひたちBRT」だ。2005年に全線廃止となった日立電鉄線の廃線跡のうち、海岸沿いの8.5キロメートルにバス専用道路を整備する計画である。

渋滞に苦しみ、鉄道を手放した日立市

まずは第Ⅰ期区間として、大甕(おおみか)駅前〜おさかなセンター間約3.2キロメートル(うち専用道1.3キロメートル)が2013年3月に開業した。

今後、線路跡の専用道化を進めて2016年度中にJR常陸多賀駅まで延伸し、将来は日立電鉄の終着駅だった鮎川駅跡を越えてJR日立駅まで結ばれる予定だ。

なぜ、日立市はBRTを導入したのか。日立市都市建設部新交通推進課の関充夫氏は「日立市特有の交通事情があり、市内公共交通の改善は喫緊の課題だった」と語る。日立市は多賀山地と太平洋に挟まれた幅2〜3キロメートルほどの平地に、市街地が密集している。

幹線道路は国道6号線と245号線があるが、いずれも片側1車線の区間が多く、道路混雑率は茨城県内でワーストクラスだ。

かつては、この狭い市内を日立電鉄が南北に結び、渋滞知らずの通勤・通学の足として欠かせない存在だった。しかし2003年、日立電鉄は自家用車の普及による利用者の減少などから全線廃止の方針を表明。市も「交通政策の要は道路整備」として早々に廃止に同意し、2005年3月限りで全線が廃止されてしまう。

2005年まで運行されていた日立電鉄線。廃止表明から全線廃止まで1年半という慌ただしい廃止だった

代替バスは慢性的な交通渋滞によって定時運行を確保できず、利用者数は初年度から鉄道時代の3分の1に落ち込んだ。

廃止から3年後の2008年、日立電鉄の跡地が無償で市に譲渡され、その活用法が検討された。そこで打ち出されたのが、渋滞に悩む海側の鮎川〜久慈浜間をBRT専用道路として整備するという構想だ。先行して実用化された同県の旧鹿島鉄道跡の「かしてつバス」や、JR気仙沼線・大船渡線BRTなどと異なり、極力一般道を経由せず、専用道や優先レーンを整備するBRTだ。

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