なぜ日本郵便は、セゾン投信に出資するのか ゆうちょ側はPRだけ、手数料収入もゼロ

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セゾン投信は2007年3月の営業開始以来、「直販投信会社」のスタンスを崩さず、現在に至っている。直販とは、投資信託会社が自社ファンドを販売する販売形態のことで、投資家にとっての魅力は、ローコスト運用が可能な点にある。

投資家、日本郵便、セゾン投信「三方よし」の発想

直販以外の投資信託会社は、証券会社や銀行などの金融機関に販売を委託しているため、そのファンドを購入する際には「購入手数料」がかかることが多い。これに対して、直販投信会社が運用しているファンドは、販売金融機関が介在しないため、購入手数料をゼロに抑えることができる。

「セゾン投信はこれまで直販にこだわってきた。しかも、運用しているファンドも2本だけ。これは、既存金融機関の投信販売ビジネスに対するアンチテーゼでもある。これまで証券会社や銀行の多くは、次々に新しい投資信託を販売し、乗り換えを促すことによって手数料収入を獲得していくというビジネスモデルをとってきた」(中野晴啓・セゾン投信社長)。

投資信託の回転売買は、長期的な資産形成に資するという、投資信託本来の社会的意義を損なう結果につながりやすい。だから、「今後も運用ファンドの本数を増やすつもりはないし、直販にこだわり続けたい」(中野社長)。

日本郵便も、こうしたセゾン投信のスタンスを理解しているがゆえに、今回のようなスキームに落ち着いたと考えられる。全国2万4000局でのPR活動に止めておけば、直販というセゾン投信のこだわりを崩すことなく連携が成立する。しかも、郵便局を拠点とするPR活動が奏功してセゾン投信の業績が上向けば、出資額に応じた利益配分を得ることができる。

「セゾン投信のファンドはノーロードが売りで、かつ運用管理費用も低く抑えられている。したがって、金融機関が間に入って販売仲介をするというスキームに馴染まない。そのため、お客様にセゾン投信のファンドを知ってもらうことが利益につながる仕組みを検討した結果、出資という形に落ち着いた」(日本郵便・高橋享社長)。

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